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「禰豆子ちゃんって言うんだね、君は。僕は逆崎Aだ。よろしくね」
それは過去、炭治郎や禰豆子とAの出会い。
そう笑顔で禰豆子に声をかけ手を差しのべたAに柱達は目を丸くしていた。
炭治郎はどれ程そんなAの言動に、行動に救われたか。これほど、恐ろしいほどの優しい匂いは嗅いだことがなかった。
「会いたかったです、逆崎さん」
「…僕は、出来れば他人でいたかったよ」
炭治郎は立ち上がろうと体を起こす。しかし今世の炭治郎はただの高校生。あんな衝撃に体が耐えられるはずもなく、痛みに顔を歪ませた。
「炭治郎君、あのね」
「俺らは鬼殺隊です。逆崎さんにばかり押し付けるわけにはいきません」
「一般人なんだよ君は。そうだろう?」
「でもっ!」
「頼む。忘れてくれ、炭治郎君。僕は君に、二度と刀なんて握らせたくない。それは君じゃあなくてもだ。かつての仲間や友人が新たに生を授かって生きているのなら、僕は二度と刀なんて握ってほしくないんだよ」
それはAの切実な願いでもある。人並みの幸せを、かつて他人のために刀を握った仲間達に。
「この件は僕が預かってる。少なからず協力してくれる人もいるんだ。分かってくれ、炭治郎君」
昔からAのその諭すような目が炭治郎は苦手だった。それは何も言い返せなくなるから。はい、という返事しか受け付けられないからである。
「おい、鬼狩り。その子供は知り合いか?知り合いならきつく言っておけ。こんな所に迷い混むなど洒落にならんぞ」
「優しいなあ、君は。もしかしてマフィアは向いてないんじゃないか?」
「笑止」
勿論芥川は邪魔だという意味を込めた皮肉だったわけだが、Aも案外ひねくれているのである。
「さて」
ひとしきりそんな芥川にAは笑ってから、そう炭治郎に目を向ける。「炭治郎君。一度その怪我を治療しよう。知り合いにいい医者がいる。それで、怪我も、今日の出来事も全て忘れてくれないか?」
炭治郎は悲しそうに、悔しそうに。何よりAにそんな顔をさせてしまっている自分に腹をたて、唇を噛んだ。
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赫赫 - えっそこで更新停止…!?勿体ない……!!とても面白い作品です!更新して欲しいです! (2021年12月9日 7時) (レス) @page39 id: 33d74645c1 (このIDを非表示/違反報告)
10優 - すんごく面白いです!一瞬で文スト(鬼滅?)の世界に引き込まれちゃいました(笑)更新待ってます。頑張って下さい! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 9d99cb2590 (このIDを非表示/違反報告)
六花 - あのお願いがあるのですが、逆崎君の詳しいプロフィールを教えてほしいです!無理ならば大丈夫ですよ。更新いつでもいいので頑張ってください! (2019年10月12日 19時) (レス) id: 1558ece2fb (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ルルナナさん» ありがとうございます(*^^*)不定期な更新ですが、ぜひ逆崎君の物語にもうしばらくお付き合いください。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月11日 0時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ルルナナ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!此れからも頑張ってください! (2019年8月10日 23時) (レス) id: f75b5a5c4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2019年5月25日 23時