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「ま、いいんじゃないの?」
ぽりっ、と煎餅が音を立てる。「え」とAはすっとんきょうな声をあげた。
翌日、探偵社。Aは乱歩に相談していた。
「僕らはここの社員だから行動が限られるけれど、君はそうじゃない。そもそもあっちがその話を持ちかけてきたんなら、君が乗らない手はないんじゃないの?」
もし鬼が、鬼舞辻無惨が復活した理由が異能力であるのならば、その異能の所有者が死亡することによって鬼が消えるということは十分にあり得る。
「ああ、しかし」
「君が恐れていること、僕が当ててあげようか」
うっすらと乱歩が目を開ける。Aはフルフルと首を振って、「勘弁してくれ」と苦笑した。
「君が恐れているのは復讐相手がいなくなること」
「勘弁してくれ、といったのに」
つまり図星である、と。「理屈の話じゃないんだ」
「勿論それが最善策であるし、今一番の近道であることに違いない。けれど僕は鬼滅隊で柱なんだ。プライドと僕の今までの時間が、決断を渋らせる」
こんなにあっさり解決してしまうことをAはどこかで拒んでいた。なら自分のこれまでの時間はなんだったのか、と思わずにはいられない。
「ま、その気持ちは分からなくもないけど。ただ君が自分の立場に誇りを持っているのならば、どんなことより早くこの件を解決すべきだ」
「……そうだ「すまん、逆崎」
バタン、と探偵社の扉が慌ただしく開く。国木田が息を切らして、どこか切羽詰まった表情でAに言った。
あの国木田が遅刻、というのにはどうやらただならぬ理由があるらしい。
「まずいことになった」
「……逆崎、今すぐ動ける準備して。国木田、大方の場所は」
「最後に見たのは三丁目の路地裏です」
「ちょ、待ってくれ。なんの話だ」
Aはトントン拍子に進んでいく会話に動揺しつつもそうストップをかける。国木田は眼鏡を整え、「少年が拐われた」と口にした。
「花札の耳飾りをした少年だ。少年は鬼舞辻無惨、とお前がよく口にする名前をこぼしていた。
昨日の昼間、俺は偶然そいつらと出くわした。いやな予感がしたからこっそり少年の方をつけると、路地裏に、引きずり込まれた」
後悔を噛み締めるように国木田が言う。
「……冗談だろ?」
鬼は日の下を歩けないんだ──
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赫赫 - えっそこで更新停止…!?勿体ない……!!とても面白い作品です!更新して欲しいです! (2021年12月9日 7時) (レス) @page39 id: 33d74645c1 (このIDを非表示/違反報告)
10優 - すんごく面白いです!一瞬で文スト(鬼滅?)の世界に引き込まれちゃいました(笑)更新待ってます。頑張って下さい! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 9d99cb2590 (このIDを非表示/違反報告)
六花 - あのお願いがあるのですが、逆崎君の詳しいプロフィールを教えてほしいです!無理ならば大丈夫ですよ。更新いつでもいいので頑張ってください! (2019年10月12日 19時) (レス) id: 1558ece2fb (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ルルナナさん» ありがとうございます(*^^*)不定期な更新ですが、ぜひ逆崎君の物語にもうしばらくお付き合いください。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月11日 0時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ルルナナ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!此れからも頑張ってください! (2019年8月10日 23時) (レス) id: f75b5a5c4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2019年5月25日 23時