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「話すことか。取り敢えずこれが終わってからってことでどうかな」
雪の呼吸 漆の型 忘れ雪
刀を抜き再びそれを鞘に戻すのは一瞬。静かに、それでいて大胆な太刀筋の雪の呼吸は、Aだけのものである。
コロリと壊れたおもちゃのように転がった首はすぐに塵のように消滅した。
本来Aはこの鬼を追ってこの場に来たようなものである。いくらたいした力のない鬼とはいえ、人を食えば力を持ち、なにより失われた命は戻らない。
「く、びが」
辻村が顔を青くさせる。綾辻は「これが」と興味深そうにこの光景を見ていた。
「それで話というのは?」とAは人当たりのいい笑みを浮かべる。
「俺の異能力は事件の犯人を見抜くと、その犯人が必ず事故死する異能力」
「ああ、酷な異能だね。是非鬼舞辻無惨を殺してくれ」
Aのその言葉に温度はない。明確な殺意がこめられている。自らを殺した恨みというよりも、大切な仲間の命を多く奪い、そして傷つけたことによるものだ。
「それが鬼の長か」と綾辻は言う。「だがそれは出来ん」続けて、はっきりとそう断言した。
「鬼は貴様しか殺せないのだろう?俺では完全には殺せん。俺が出来るのはせいぜい、その鬼を再びこの世の復活させた愚かな人間を事故死させることくらいだ」
「……それが政府の人間だってことまでは一応僕も分かった訳だけれど。政府はその件を間違いなく揉み消しているし、その人間の生死は不明だ。と」
Aは苦笑しながら「彼らが言っていた」とつけたした。
「だろうな。そこで君に提案がある」
「提案?」
Aだけでなく辻村もその言葉に首を傾げる。「お前は政府に恩を売れ」
「恩?」
「そうだな。ああ、訂正しよう。脅せ。お偉いさんでも拉致ればいい。それで鬼を政府が復活させたという証拠でも、些細な情報でもいい。持ち帰れ」
「……無茶だ。無茶苦茶だ。確かにそれで君が謎をといてその犯人が事故死したとしても、鬼が消える訳じゃない」
「どこにそんな確証がある?それは俺が推理すれば分かる。だから貴様は情報を持ってこい、必ずだ。第一」
第一ここは魔都ヨコハマだぞ?──
「異能力者がゴロゴロいる。鬼だなんてそんな大昔の絶滅したはずの怪異がいるという話で、ここの住民は真っ先に異能力というものを思い浮かべるだろうな」
綾辻は同意を求めるように、そうだろう?とAに問いかけた。
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赫赫 - えっそこで更新停止…!?勿体ない……!!とても面白い作品です!更新して欲しいです! (2021年12月9日 7時) (レス) @page39 id: 33d74645c1 (このIDを非表示/違反報告)
10優 - すんごく面白いです!一瞬で文スト(鬼滅?)の世界に引き込まれちゃいました(笑)更新待ってます。頑張って下さい! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 9d99cb2590 (このIDを非表示/違反報告)
六花 - あのお願いがあるのですが、逆崎君の詳しいプロフィールを教えてほしいです!無理ならば大丈夫ですよ。更新いつでもいいので頑張ってください! (2019年10月12日 19時) (レス) id: 1558ece2fb (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ルルナナさん» ありがとうございます(*^^*)不定期な更新ですが、ぜひ逆崎君の物語にもうしばらくお付き合いください。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月11日 0時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ルルナナ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!此れからも頑張ってください! (2019年8月10日 23時) (レス) id: f75b5a5c4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2019年5月25日 23時