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Urata. side
稽古場へと到着すると、そこには剣の素振りをしているまーしぃの姿があった。
昼食に顔を出さなかったということは、きっと朝から稽古をしていたのだろう。
額には汗が浮き出ており、特徴的な紫髪からは雫が垂れていた。
俺は既に開いてあった稽古場の扉を数回ノックする。
その音で俺たちに気づいたであろうまーしぃは、剣の素振りを一旦止め、タオルで汗を拭いながらこちらへと歩いてきた。
｢おはよう、主。今日は昼に顔出せんくてごめんな｣
まーしぃは申し訳なさそうに言うと、｢着替えておいで｣と付け足して俺たちの横を通り過ぎていった。
きっとシャワーでも浴びるのだろう。
これからまた汗をかくと言うのに、定期的にシャワーを浴びたがるのはまーしぃの十八番のようなものだ。
主はまーしぃに言われた通り、部屋の横に設備されてある更衣室に入っていった。
その間、俺とさかたは部屋の外と中に別れて待機する。
万が一、主に何かあった場合直ぐに対応出来るようにだ。
｢なあ、うらさん｣
主が更衣室に入って数分、さかたは壁越しにそう言葉をかけてきた。
｢主のこと、だろ？｣
｢…うん。うらさん、何か知らん？｣
きっとさかたが問いたいのは、先程の昼食の時のことだろう。
さかたは主の側近兼護衛に加え、体調管理や精神的な面でも主を支えている。
だからこそ、主のちょっとした異変にもいち早く、敏感に反応するのだ。
｢…主、今日はちょっと上の空っていうか、いつもみたいな元気が無かったように思うんよ｣
その瞬間、俺の頭に横切ったのは、あの朝の出来事だった。
.
『…私は、お兄様みたいになれると思う？』
.
あの後、主は何事なかったかのように食堂に行くよう俺に促した。
俺の言葉が主にどう伝わったのかは分からない。
ただ、主に伝えた言葉は俺の本心そのものだった。
｢…実は｣
『あれ、さかた？どうしたの？』
俺がそう言いかけた時、部屋の中から主の声が聞こえてきた。
俺は主の言葉にはっと口を噤み、部屋の中へと足を踏み入れる。
主は俺と話す為壁によりかかっていたであろうさかたを見て、不思議そうに首を傾げていた。
｢え！？あ、いや、なんでもないで！？｣
『そ、そう…？』
さかたのあからさまな動揺っぷりに、主は若干引き気味だ。
俺は小さなため息を一つ零して、未だ動揺を隠しきれていないさかたの服袖をグイッと此方へ引っ張った。
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作者名：お餅。 | 作成日時：2020年9月27日 15時
