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御人好し ページ13

もう一度頭を抱えた。
私が言葉を、歩き方を、常識を知っていたのと同じような基本的な知識として、『イカとタコは敵同士』というものを知っていた。
敵同士なのだ。素性も知れない相手なのだ。
いくら記憶喪失だといっても、いつ記憶を取り戻して襲ってくるか、そもそも記憶喪失自体が嘘という可能性だってある。
そんな敵が、ブキも装備も持たず、一人で倒れていたのだから普通はその場で始末するなり縛るなりするのではないか。
このイカの歳から察するに、あの『大戦』真っ只中を生きてきた世代だろうし、それならば余計に警戒心が高いだろう。
しかし。現にこの目の前にいる老いたイカはそうしなかったのだ。
ただ、同じ曲が好きだという理由だけで。

「ん?おぬし、No.10008と言うのか?」

自分の手元を見てアタリメがそういったので、私も腕をよく見てみた。右手首に、金色に光る環状の何かがはめられていた。

「え?イチマンハチ?……いや、違ウ。ケド、呼び名ができると少し安心するワ。」

「そうか!じゃあ、おぬしを8号と呼ぶことにするぞい!」

「8号か。少し懐かしさがアル。暫定的だが、そう呼んでホシイ。」
右手を胸の前で握る。

「じゃあ、おぬしは今日から8号じゃ!」
薄暗い電車内、彼の声が反響した車両は、僅かに他の車両よりも明るい気がした。

「エ〜次ハァ〜深海メトロ中央駅、深海メトロ中央駅でございまァす。お降りの方はお忘れ物にご注意くださァい。」
電車が減速を開始して、立っていた身体が前に引っ張られる。
窓の外の景色が開けた。

深海メトロの心臓部→←地下鉄



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2円玉(プロフ) - ますまろさん» 嬉しいコメントありがとうございます! (2019年1月21日 6時) (レス) id: dac448df51 (このIDを非表示/違反報告)
ますまろ - 語彙力がすごくて、その場の様子が頭にすぐ浮かぶので、この小説が好きです!更新頑張ってくださいね! (2019年1月20日 23時) (携帯から) (レス) id: 6e11289f4f (このIDを非表示/違反報告)
2円玉(プロフ) - カーボンさん» ありがとうございます!設定の所は特によく考えたのでそう言って下さるととても嬉しいです! (2018年8月4日 14時) (レス) id: dac448df51 (このIDを非表示/違反報告)
カーボン - 設定のところ読んでみて「いいな(*^^*)」と思おました!これからも頑張ってください (2018年8月4日 13時) (レス) id: ce3680d7ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:2円玉 | 作成日時:2017年12月28日 13時

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