【サンジ】息を吸って 2 (ページ22)

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No.71 ページ22

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　サンジはゾロに前と同じようにおにぎりを、私にはホットミルクを持ってきてくれた。一度医務室に持っていったが、私がいないと知って驚いたらしい。

　
　カップとソーサーを2つずつ用意して、ひとつはホットミルクを、もうひとつには紅茶を慣れた手つきでいれている。手がきれいだなとか、動作に無駄がなくていいなとか、頭の中をどうしようもない思考が巡る。

「Aちゃん、ハチミツ入れる？」

　こくりと頷いた後で、甘やかされている子供のようだと感じてなんだか少し恥ずかしくなった。

　息で吹きかけて少し冷ましてから、渡されたホットミルクを一口飲む。ほんのりハチミツの甘い味が口いっぱいに広がった。そしてその甘い味は母のことを思い出させてくれた。

　私が風邪を引いた時、一度だけこうしてくれたのだ。いつもは寝る前に甘いものはダメだと言っていたのに、風邪を引いたその日だけはホットミルクにハチミツを入れてくれた。

　昔自分もやってもらった事があるのだ、と言いながら母自身も飲んでいた姿を思い出す。それと同時に島を出る前に病室でみた、弱った母の姿も連想されて少し気持ちが沈む。

　私だけが今幸せでいいのだろうか。

　そんなの考えても仕方のないことだとはわかっている。

　だけど。

「大丈夫？やっぱりまだ具合悪い？」

　声をかけられてハッとした。サンジが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。

「ううん、全然大丈夫。……少し考え事してただけだよ。」

　声のトーンを少し上げて明るく見えるように努める。サンジは一瞬何か言いたげな顔をしたが、それ以上は踏み込まないでいてくれた。