第七話「「彼女」を心配する理由2」 ページ35
『いつも僕の手が離せない時に、夏音のことを任せてしまってすまない』
《謝らないでください、降谷さんのためでもありますから》
《その…降谷さん、杞憂であってほしいのですが夏音さんのことで気になることがありまして》
電話越しの風見の声のトーンが少し心配に思っているのか小さく聞こえた
《…食事の事もそうなのですが、少し顔色が良くないように思えまして。学校で何かあったのかもしれません》
《もちろん、勘違いでしたらすみません。出過ぎたマネをしたとは思っているのですが…降谷さんに一応お伝えしたほうがよいかと判断いたしました》
『…あぁ、帰ったら様子を見ておくよ』
《ありがとうございます、では報告のほどを…》
風見は、その真面目さ故に自分のことに無頓着な「彼女」のことを気に掛けてくれる
「彼女」は態度こそ顔に出やすいがその心境は内に秘めてしまう
苦しい時、自ら助けを求めることができないのだ
そして、付き合いが長い俺にさえ「彼女」は誤魔化し隠そうとする
「彼女」は同級生や学校での関わりを避けて心を閉ざしているが
精神年齢が俺たちに近いからか、風見を含めた年上には多少心を開いているように見えた
風見からの報告を聞き終えて、一息つく
…「彼女」の食欲の低下、顔色が良くなかった…か
それはつまり、「彼女」の精神面へのダメージがあったということだ
今すぐにでも「彼女」の元へ行きたい
そして、「彼女」を抱きしめてやりたい
きっと、独り暗い部屋の中で歯を食いしばって我慢していたに違いない
「彼女」はそうやって自分のなかの苦しみを抱えたまま心の奥底へ押し込んでいる
他人が傷つくのを恐れて、そのくらいなら自分が傷ついた方がいいと
そうやって、いつも自分を傷つけてしまうから
そうすることでしか、自分を保つことができないのだろう
第七話「「彼女」を心配する理由3」→←第七話「「彼女」を心配する理由1」
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作者名:クラウ・ソラス | 作成日時:2023年8月5日 22時