未完成のPiece7【アイナナ】 (ページ10)

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『”ねぇ、
…貴方は一体誰なの？”』

「”俺は…”」

『”…っ、やめて！”』

お兄様の手を避け、
バランスを崩して後ろの湖に落ちる。

OKです、という声とともに思いっきり息を吸い込んだ。

「こんな状況、なかなか新鮮じゃない？」

湖に落ちている私を見てユキは冷たく言い放つ。
もう少し心配してくれてもいいんじゃない…？

結局スタッフさんに助けてもらい、
監督たちがさっきの映像をチェックしている。
いくらもうすぐ夏だからとはいえ、寒いものは寒い。

「寒くない？」

『…ありがとう』

こんな時に温かい飲み物を渡してくれるお兄様は、
よく人を見ているんだと思う。
…ユキなんてさむがっている私を見ているだけだよ。

それから少ししてOKが出たので、
続きを撮影することになった。

重力に従ってただただ底へ向かって沈んでいく。
そこに現れるお兄様。
撮影のはずなのに、どこか見たことのある光景。

水の中ではなかったけど、
こう、暗い所にいて…
お兄様が助けてくれた。

「”＿＿！”」

「”大丈夫、意識を失っているだけ。
…それより手貸してもらえませんか？”」

「”あ、うん…”」

そんなことを考えているうちに撮影が進んでいく。
…あ、そろそろ目覚まさなきゃ。

そう思い、台本通りに目を開けると、
そこにはお兄様の顔。

『”おにい、ちゃん？”』

「”そうだよ。
…思い出してくれた？”」