未完成のPiece7【アイナナ】 (ページ32)

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『…ちょっと話そうよ』

そう大和さんに声をかけ、
近くのベンチに腰を下ろした。
大和さんの表情は暗いままだった。

『こんな時間にどうしたの？』

「それはAもだろ」

『私は…久々に記帳したらテンション上がっちゃって…、
色々買ってたらこんな時間になっちゃっただけ』

「大物アイドルの貯金は気になる」

『見る？』

こくり、とうなずく大和さんに先ほど記帳した通帳を見せると、
目が飛び出ていた。

「うげ…お前こんなに稼いでるのかよ。
…夢あるな」

『…そういう大和さんは？
寮から向かってきたけど、どこ行くの？』

「…家出、してきた」

『は…？』

先ほどは暗くてよく見えなかったが、
口元を見ると大きな絆創膏が貼ってある。
…喧嘩でもしたのかな。

『その傷は？』

「ミツにやられたよ、
…復讐なんて、考えるんじゃなかった。
おまえに聞いたあの日から、
ずっと俺は後悔してる。」

そう話す大和さんは弱々しく、
うつむいていた。

『私の、アドバイスのせい？』

「そうだって言ったら、
お前は俺のこと気にしてくれるのか？」

大和さんの顔が月明りに照らされ、
幻想的な空間にも感じた。

その言葉に何も返せず、
固まっているとあはは、と声を上げて大和さんは笑った。

『…何よ』

「いや、別に？
明日も撮影だし、お兄さんはそろそ行こうかな」