未完成のPiece7【アイナナ】 (ページ11)

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OK、とスタッフが合図を出した後もしばらくフリーズしてしまった。

そうだ、思い出した。
あれは確か小学生になったばかりの頃。

家で楽器の練習をしていて、
お父様にバレて暗い部屋に初めて閉じ込められたあの日。
ただただ怖くて、ずっと泣いていた。
そんなときにお兄様が扉を開けて来てくれたんだ。

『あの時みたいだね』

「…え？」

その言葉に周りはしん、とする
…撮影終わったよね？

『え、あ…ごめんなさい』

「今の撮ってた…！？」

「撮れています…！」

そして、一気に騒がしくなる。

「Aちゃん、今のいいね。
最後にアドリブいれるなら早く言ってよ」

『そう、ですよね。すみません』

全くアドリブでも演技でもなかったのだが、
結果オーライ、ということにしよう。

撮影もひと段落し、
毛布にくるまって暖を取っていると
私と同じように毛布にくるまっているお兄様がやってきた。

『覚えてる？』

「昔、暗い部屋に迎えに行ったこと？」

静かにうん、とうなずくとお兄様は優しく微笑んだ。

「台本を読んだときに思い出したよ。
まさかAが演技してて思い出すとは思わなかったけどね」

『そういうのは本番前に打ち合わせしてよ』

「でも、今日のアドリブも気に入ってくれたし、
いいんじゃない？」

『…そうじゃなくて』

いつもは神経質のくせに、
こういう時だけ神経壊すのは辞めてほしい。