未完成のPiece3【アイナナ】 (ページ46)

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撮影を無事に終わらせ、事務所に急ぐ
撮影が始まる前に彼宛にメッセージを送っておいたので、
きっと残ってくれているだろう

時刻は22時半、高校生が出歩くにはぎりぎりの時間だった

『お疲れ様です』

「あ、Aちゃん。待ってたよ。会議室行こうか」

『ありがとう』

言われるがままに会議室へ通され、
お茶を入れてもらった

そういえば撮影前にタイミングを逃してから飲めていなかったので、
コップの半分くらいまで一気に飲む

生き返る…

「そんなに急いできてくれたの？」

『やっぱり万さんが淹れるお茶は一番おいしい』

「ほめても何も出ないよ。それで、話って何？」

『あ、これなんだけど』

そういってさっき渡された名刺を出す
名前を見た瞬間、万さんの顔が引きつった

『やっぱり、面識ある？』

「まぁ、この傷の持ち主というか…。会ったの？何か言われた！？」

撮影前の話をすると万さんは少し考えた後、口を開いた

「ねぇ、Aちゃん。
明日からは送迎だけじゃなくて、
現場にも一緒に行くよ」

『そんなに心配しなくても大丈夫だよ』

「俺の傷、見たことあるでしょ？…言いたくないけど、
こうなってほしくないんだ。Aちゃんに傷をつけたくない」

『それって、プロポーズ？』

少しだけ茶化すと、そんなこと言ってないだろ、と突っ込む万さん
真剣に話すその瞳は私には少し怖かった