未完成のPiece3【アイナナ】 (ページ34)

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叔父さんにバイオリンを買ってもらってから必死に練習した。
受験当日、何も知らないお父様と一緒に会場へ行った。

実技試験ではお父様は別室待機で、
数人の面接官の前で演奏した。
面接官からは絶賛された。

問題の親子での面接では志望学科の確認で直ぐにバレた。
でも面接官が才能がある、素晴らしいと絶賛してくれたことからお父様は何も言えなくなり、
そのまま面接が終わった。

帰った後はとてつもなく怒られたが、
無事に合格することができた。

「音楽科に入ったの？」

『うん』

「凄いじゃないか、今度僕にもきかせてよ」

家族の中で褒めてくれたのはお兄様だけだった。

もちろん親族にも冷たい目で見られた。
社会勉強として投資を教えられ、
渡された100万円をすぐ数億円にまで増やし、
少しだけ認めてもらうことができた。

子会社の経営だってやらされた。
お父様から任されたことは全て良い成績を残し、
親族からはなんとか見放されずにいることができた。

ただ、学校での課題曲を家で練習するものなら容赦なく叩かれた。
お父様の機嫌が悪い時は暗い部屋に閉じ込められた。

この暗い部屋は夏は暑いし、冬は凍えるほど寒い。

『お父様、ごめん、なさい』

凍えながら呟いてもその声は届くことは無かった。
お父様は必ず日付が超えた頃にやってくる。

「早くしろ」

『はい』

今思うとお兄様が寝た後に出していたのだと思う。
お父様はお兄様や親族の前では怒鳴らない。

これはお父様と私の秘密だった。