コード・ブルー～短編集～ (ページ16)

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冴島side

Aさんと藍沢先生は

いわゆる幼馴染みというやつだったらしい。

歳はAさんの方が３つ上だけど、

子供の頃住んでいた家が近く、

境遇が似ていた２人はすぐに意気投合したという。

と言っても

仲良く一緒に遊んでいたのは

藍沢先生が物心つく前までの話みたいだけど。笑

それからは信頼できる幼馴染み、という関係で

困ったときは相談に乗って、

助け合って生きてきたのだと思う。

『はるかちゃん、

私、脳外のナースとして復帰することにした。

これからまたよろしくね』

そんなメールがきたのは

Aさんがフライトナースを引退してから

約２年後のことだった。

あっという間に過ぎる幼児期を

一緒に過ごしたいと思うのは

親の持つ当然の心理だと思うけど、

シングルマザーとなると

子育てだけでなく、自分で稼がなきゃいけない。

苦渋の思いで復帰を果たしたAさんと

おそらくどこかで会って、

食事でも共にしたのだろう。

フェロー卒業後、

藍沢先生は一分の迷いもなく

脳外のドクターとなった。

２人の結婚はその２ヶ月後。

『Aには子供の頃世話になった。

借りを返すだけだ』

そう言ってたけど、

多分藍沢先生は昔からずーっと

Aさんだけを想ってきたんだと思う。

モテるはずなのに今まで女っ気がなかったのは

きっと、Aさん以外の女性を知らなかったせいだ。

森の奥に佇む小さなチャペルで行われた

ささやかな結婚式は

ドレス姿でガーデンを走り回る柚子ちゃんを

暖かく見守る２人が印象的な

とても素敵なものだった。

同僚に隠す必要なんてないくらい

幸せだけに溢れた結婚式だった。

ピロロン

遠い記憶の中を彷徨っていた意識が

急に現実に引き戻される。

藤川ごめん、急患で今日は帰れない

既読だけつけて

返信はしなかった。

怒ってるわけじゃない、

あの人が嘘をついてるんじゃないことは分かるから。

がんばってね

心の中で呟いて、眠りについた。