1章 6節目 2人の違和感 ページ7
『ま、待ってください!僕は安心出来る幽霊でして…!誰かを脅かす悪い幽霊ではないのです…!』
「さっきクルミ脅かしたくせに!?」
ナナキは高速で首を横に振る。
クルミッシュはナナキの肩をガシッと掴む。
霊体だが何故か触れる事は出来るようだ。
「お願い!クルミはどうしても聞き出さなきゃいけないことがあるの!それには、君の力が必要なんだ!多少脅しにはなる…けど、それくらいしないときっと…何も話してくれない」
クルミッシュはそう言うと、悲しそうに俯く。
「……もう…子供扱いされて、守られるのは嫌なのよ」
『クルミ…さん…』
ナナキは肩を掴む手が震えてる事に気がつく。
…脳裏に浮かぶ、友達の死。
目の前で爆発し、肉片となった友人テネブラエ。
その光景は、数十年経った今でも、クルミッシュの脳裏にしっかりと焼き付いていた。
『…………』
ナナキはそっと、クルミッシュの頬を撫でる。
クルミッシュはゆっくりと顔を上げる。
「ナナキ、くん…?」
『…貴方の様子から、遊びではないことがわかりました。そして…何かを抱えているという事も。
脅かす事で力になれるのなら…僕は喜んで手を貸しましょう。それに…』
ナナキはクルミッシュの頬から手を離し、空を見上げる。
『…僕も、多分貴方と同じ事を思っています』
「同じ、こと?」
『はい』
ナナキは視線をクルミッシュに戻し、一輪の花を手にとる。
『表面は英雄伝説。悪者は消え、復興に向かう国。普通ならそう思います。ですが…違う。何かが違う』
花を、花畑の中に落とす。一輪の花は、大量の花の海に沈み、姿が見えなくなる。
『…この国は、何かがおかしい。
何か、別の存在があったような…そんな気がするのです。そうでなければ、あんなに犠牲者が出たのに…クインタレッリの王子様が罪に問われないはずがありません』
クルミッシュは目を見開く。
ナナキは幼いが、かなりの切れ者のようだ。
そして…クルミッシュと同じ、『違和感』を持つ者。
クルミッシュは真面目な顔になる。
「君も感じてたんだね。クルミも同じなの。私の知る『記憶』と…実際の『記憶』は、違う気がする。クルミは…私は、その真実が知りたい。この世界の謎を解きたい」
クルミッシュは花を持って立ち上がる。
ナナキはクルミッシュの横で浮遊する。
2人は顔を見合わせ、頷くと足を踏み出す。
目指すはハイクラウド城。
きっと彼らなら…何かを知っている。
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作者名:あイカらカイあ | 作成日時:2021年2月25日 20時