1章 1節目 いつもの朝 ページ2
「クルミちゃん、起きて。起きてってば」
魘されるクルミと呼ばれた少女…クルミッシュを揺する、1人の男性。
何度も揺するが、魘されたまま夢の世界から帰ってこない。なかなか起きないクルミッシュを見て、男性はため息をつく。
それと同時に、白髪の男性がノックをし、車椅子をおして部屋に入ってくる。
「あれ、まだ起きないのか。珍しいな、ニコラスが苦戦するなんて」
「うん。何回も声かけて起こしているのだけれど…。ブウェルガ、起こしてもらってもいいかな?」
わかった、と白髪の男性…ブウェルガは車椅子をおしてクルミッシュのベッド付近に近づく。
そーっと蛸の触手を出して、クルミッシュの頬にピトッと当てる。吸盤で吸い付いているのか、皮膚が少し引っ張られている。
ブウェルガは薄ら笑いを浮かべながら、その触手を一気にひく。吸盤で吸い付いた頬はその触手と共に引っ張られ、強烈な痛みがクルミッシュに伝達する。
「あだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」
少女の絶叫が部屋に響き渡る。
クルミッシュは触手と共にガバッと起き上がる。
「おはよう、クルミ。いい朝だな」
「ひ、酷いよブウェルガお兄ちゃん!触手は使わないでって前にもいったじゃーん!!」
「お前が起きないからニコラスが困ってた。だからニコラスの代わりに起こした。それの何処がダメなんだ?」
「だから触手を使うところだよ!! 」
「いやお前普通に起こしても絶対起きないし…」
「酷いよー!!」
「ま、まあまあ…落ち着いて落ち着いて…。ほら、クルミちゃん顔洗っておいで?アイオーンさん、ご飯作って待ってるよ」
「ほんと!?わーいご飯!!」
ご飯、というワードを聞いた途端、クルミッシュの目は完全に覚醒する。ベッドを飛び出して寝巻きのまま洗面台へと走っていくクルミッシュを見て、ニコラスとブウェルガは苦笑する。
「…あいつ、いつもああならいいのにな」
「うーん…僕からするとブウェルガもクルミちゃんと同じなんだけどなぁ…」
「え、あいつよりはマシだと思うのだが」
「どっこいどっこい、だよ」
ニコラスはクルミッシュが乱したシーツを直すと、ブウェルガの車椅子をひいてリビングへと向かった。
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作者名:あイカらカイあ | 作成日時:2021年2月25日 20時