今宵、月夜に君は輝く。Ⅱ (ページ4)

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『安田くん、お幸せにね』

ニコッと笑ってから他人行儀でそう言って、後ろを向いた

これでこの気持ちには終止符を打たないと…

振り向き際に見えた章大くんの顔。

泣きそうな顔をしてるから、抑えたものがまた込み上げてきた

章大くんに見せつけるように、大倉さんに寄りかかる

＂もう、私は大丈夫だよ。前向くから元気でね＂

そんな精一杯の強がりが伝わればいいのに。

何度も振り返りたくなった。
もう１回章大くんの顔を見たくなった。

けど、振り向くときっと私はずっと章大くんに依存したままだ

今日で全部終わりにしよう。
こうやって最後に笑顔を見せられてむしろよかった。

いつまでもうじうじしてる神様が私を前に向かせるために用意してくれたんだ

章大くんは別の人と結婚して、いずれ私も他の人と結婚する。

そして、それぞれ別に幸せな家庭を築く。

5年も一緒にいたけど、章大くんの運命の相手は私じゃなかった。

ただそれだけ。

でも、無駄じゃなかったよね？

「…頑張ったな」

大倉さんがそんなことを優しい声で言うから涙が止まらなくなった