今宵、月夜に君は輝く。Ⅱ (ページ37)

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『そうだ。これ返しといてくれって…』

白々しく話をそらすために鞄から幹山さんから受け取った鍵を出す

「え、どうしたんこれ？」

『幹山さんに昨日たまたまお会いしてこれ返しといてくれないかって』

「知り合いやったん？」

『大倉さんと幹山さんがマンションの前でお話してた日あったじゃないですか？』

「…あー」

『その日に目合ってそれでお互いに顔覚えてて、昨日たまたまあって一緒に飲みに行こって誘われて…』

「嘘やろ、」

大倉さんが家の前でしゃがんで頭を抱えた

『なんか、すみません…』

「いや、Aちゃんは悪くなんいんやけど、、」

言い終わると同時に、大倉さんがバっと立ち上がって、急に肩を掴まれた

『ど、されました、？』

「なんか、変なこと聞いてへんよな？！」

変なことってのは、大倉さんの忘れられない人の事とか…
その人が、Moonのデザイナーだとか…

『なんも聞いてないです、、』

「なら、よかった……」

きっと幹山さんは、フラれた腹いせに言ったとかじゃないだろうし

聞いたってことを大倉さんに言ってしまうのは、幹山さんに悪い気がする

大倉さん、嘘ついてごめんなさい……

「鍵、ごめんなわざわざありがとう」

『いえいえ、じゃあ…！』

鍵を無事に大倉さんに返し、とっとと帰ろうと扉を開けようとした私の腕は呆気なく大倉さんに掴まれる

「今週末、暇？」

『へ？』

「だから、今週末空いてる？」

『空いてますけど、』

「なら、映画行かへん？面倒なお使い請け負ってくれたお礼させてや。」

『そんなお礼して貰うようなことしてないですよ』

ただ鍵を渡しただけなのに。
なんなら渡すタイミングなくて頼まれてから1日遅れだし。

「俺も久々映画観たいなーって思うててん
せやから、あかんかな？」

『…わかりました』

そんな顔で見られたら頷く以外ないじゃん

ずるいです、大倉さん