今宵、月夜に君は輝く。Ⅱ (ページ34)

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いつも着てるMoonのスーツはどうしても着る気になれなくて、もうひとつのシンプルなスーツを着る

『よし、大倉さんはいない……』

人様の家のスペアキーなんて勝手に持っておくもんじゃないって分かってるけど、大倉さんに会う決心がつかなく昨日の夜は渡しに行けなかった

今晩、必ず渡しに行くのでいま遭遇するのだけは勘弁してください！
心の準備が必要なんです！

今日もまた、不審者みたくコソコソ隠れながらエレベーターまでの道をダッシュしようと扉を開け出ると

「おはよー」

『…ひょぇ、、
お、はようございます』

…バッドタイミングがすぎる
びっくりしすぎてすごい変な声出ちゃった

変な空気になってるのは肌でびんびん感じてるけど、なんかむず痒くて大倉さんの顔見れない

「ひょぇって笑」

『、、すみません』

大倉さんはやっぱりあの日のこと覚えてないっぽい
なんか私ばっかりドキドキしてバカみたい

一向に目線を合わせようとしない私に大倉さんが痺れをきらして

「あのさ、俺のこと避けてへん？」

『そーですかね…？』

「…俺なんかしちゃった？」

そんなことを聞かれるから、
ちらっと大倉さんの顔を見ると、変態みたいに真っ先に形のいい唇に目がいってしまった。

キスされましたーなんて言えない無理無理

『私ワスレモノしたかもです、、
すみません、じゃあ！』

「あ、ちょっ…!」

一方的に別れを告げて、急いで部屋の中に戻る

扉に背中をくっつけて1呼吸おくと

感じ悪かったな…
って一気に押し寄せてくる後悔。

意識しちゃってるせいか大倉さんがいつもよりかっこよく見える。
もちろんいつもかっこいいけど、、！！

あぁ、なんか、もう、大倉さんの顔見るだけで恥ずかしい。

大倉さんはなんとも思ってないというか、なーんも覚えてないコトでこんなにもドギマギしてるのアホらしいってわかってるけど…

もしかして酔っ払ったら大倉さんキス魔になる感じ？

…それともあの瞬間大倉さんには私が長年の片思い相手に見えててその人の代わりだったのかも

あー無理、しんどい…