Chapter1-「夏への扉」�� ページ7
ふいに、ボードが体制を崩した。
その拍子に、二人とも地面に転がる。
体が地面に打ち付けられた痛みで、両者ともうめくような声をあげた。
エリィ「...ったた...」
ビビ「う...」
エリィ「だ、大丈夫？」
不意の出来事だったが、エリィの立ち直りは早かった。
すぐさまビビの下へと駆け寄り、声をかけた。
ビビ「...う、うん...」
体を起こしながらビビは言う。
エリィは「悪いとことか打ってない？」などと心配そうな声音で聞きつつ、体をビビに近づける。
ビビは自身の体に目を見やる。
手のひらに地面に打ち付けた時の痛みは少し残っていると感じたものの、大きな傷などは...
ビビ「あ」
自身の右手首を見る。リストバンドの位置が大きくずれていた。
元々バンドをつけていた箇所から、地肌より少し白ばんだ、もしくは赤くなったいくつもの線状の跡が見えていた。
ビビにとっては、見えて”しまって”いた。
＿＿最悪だ。
そう思った。
直後、ビビはエリィから自身の腕が見えないよう、両手を後ろに回し、手早くリストバンドの位置を元に戻した。
＿＿面倒だ。
”これ”が目に見えたとして、何かを思われるのも、もしかしたら気を遣われるかもしれないのも、そうでなければ、内心で軽蔑されるのかも。レッテルを貼られるのかも。
今日会ったばかりの人に、”これ”を見られてしまった...かもしれない。
更に面倒なのは、こんな風に、今、色々考えてしまう自分だ。
ぐちゃぐちゃになる。
誰が悪いとかじゃない。強いて言うならば、そもそも自分が＿＿。
でも。でも、はけ口がどこかにないと...。
だから。だから...。
自分の視界すらぼんやりとするくらい、ビビは自分の感情を大きくさせ始めた。
が。
エリィ「行こっか」
エリィが声をかける。
その声に、ビビは我に返った。
＿＿今は、そうだった。兄の研究室に行く途中で。この人と一緒に、その場へと向かっていて。
それで、転んでいたんだった。
エリィは、ビビの腰に腕を回し、ビビが立ち上がるのを支えた。
エリィ「大丈夫そうだね？いこ？」
ビビ「...うん」
先の体勢と同じになると、エリィは再びボードを進ませた。
エリィは、自分の腰に回しているビビの腕を、より強く握った。
ビビもまた、先よりも強く、エリィを後ろから抱きしめる。
ボードが少し揺れるたびに、わざとらしくエリィの背中に自分の顔を近づけた。
誰かの体温を感じる。
自分は、人恋しいんだ。
そう思った。
Chapter1-「夏への扉」�Β�←Chapter1-「夏への扉」��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 11人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kakuse - to:1-3 門外漢へ説明できない不通さは開発者あるあるですね、なんでリアルなんだ……。無機材って金属やセラミックでしたっけ、ここからスケート装備につながってく予感。ティータイムを裂く黒シルエット！ いつもいいとこで終わりますよね。 (7月23日 23時) (
レス) @page5 id: 81da8a903e (このIDを非表示/違反報告)
kakuse - to:1-2 マンガ表現もお手の物……！ 洋画なRingRing....が新鮮、そして妄想内ビビがお花畑かわいい。しかしアイドル狙いはキャラ紹介見る限りだと少し意外でした、いつか活かされるのかなこの設定。無色な夏休み差し込んだバイトの電話には喜興期待。すぐ読みます。 (7月23日 23時) (レス) @page4 id: 81da8a903e (このIDを非表示/違反報告)
kakuse - to:1-1 エラー→ホームルームの順番がいいですね。逆よりずっとスムーズ、これって話の流れをデザインとして捉えられる人の所業と思います。そして各シーンに絵がついてるの嬉しい！ モニター風にgifらせたり後席少年がビビの無音を引き立ててたり、いちいち喜興します (7月6日 21時) (レス) @page3 id: 81da8a903e (このIDを非表示/違反報告)
kakuse - to:キャラ紹介 [○○のすがた]好きですｗどのキャラも手に性格が出ていてキャッチしやすく、オーラ（？）の色も強すぎず見やすいです。兄妹で類似カラーなのもいいですね、ニド○ン♂♀。 (7月4日 21時) (レス) @page2 id: 81da8a903e (このIDを非表示/違反報告)
kakuse - 毎日読みます！ (7月4日 20時) (レス) @page1 id: 81da8a903e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナオ | 作成日時：2022年7月9日 4時
