羅刹の幻影は囁く part11

【FAMILY】23 ページ39

ぐっと握られた拳が開かれ、頭を撫でる腕が掴まれた。驚いて珂波汰の顔を見ると、濡れた瞳と目が合った。



珂波汰「アンタも一緒に行くんだよ！！どこにもいくなって…一緒にいろって言っただろ！！！」
『…………ごめ「ごめんとかもう言わせねぇ！！！」っ！』



腕を引っ張られ、そのまま体を倒し珂波汰に抱きしめられる。
だが、珂波汰も私の体重は支えられなかったため、そのまま地面に２人とも転げ倒れた。



珂波汰「ごめんって言って、俺らから離れるな！！！」


引っ込んでいた涙を流し、私の胸に縋りついた。逃がすまいと背には震えた彼の手が添えられている。添えられるというか、しがみつかれているが正しいけども。



那由汰「姉ちゃん」

沈黙を貫いていた那由汰も、しゃがみ私を見てきた。
その瞳は愁然としていて、逸らす事なく真っすぐ私を見つめていた。



那由汰「一緒に来て」
『那由汰？』
那由汰「珂波汰の為にも、一緒にいてあげて。離れていかないで」
『……それは』
那由汰「姉ちゃん自身にも、優しくなってあげて」


その言葉にハッとして、那由汰を見た。


だけど表情を見る前に、那由汰もまた珂波汰と同様私に抱き着いてきた。肌寒い空気と共にヒヤリとした体温が伝わるのを感じる。



珂波汰「ねえちゃん……一緒に生きるって、いってくれ」



細々とした珂波汰の声。今にも消えてなくなってしまいそうな声だった。



冷たい地面に倒れながら、こんな私の状況等知らない夜空を眺める。本当に星１つ見えない、暗黒だ。少しの明かりが見えれば心にゆとりがくると思ったのに。

はぁと吐息を吐きながら、胸にしがみつく珂波汰の頭をもう一度ポンポンと撫でる。
一緒に生きる、か……………誰かさんにも言われた事がある言葉だ。




『なんか、プロポーズみたいだな』



思った事をそのまま口に出していたら、胸に感じた温もりがバッと消えた。何かと思って視界をやれば、顔を真っ赤にした珂波汰が信じられないものを見るめで私を見下ろしていた。しかも顔は赤面だ。


珂波汰「プ、プ、プロ…っ……こっちが真剣に言ってるのに！！！」
『あー、ごめん。文脈的に何か……』
珂波汰「そういう事じゃ………てか、話流してんじゃねぇよおお！！」



だぁあと悶えながら髪をガシガシと掻く珂波汰。そして力を失くしたように「もういい」とそっぽ向き、立ち上がられた。それにつられ、那由汰も立ち上がる。

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