羅刹の幻影は囁く part11

【FAMILY】22 ページ38

『それくらいあるんだよ。負債が』
那由汰「負債って、いくらくらい…」
『あー、いくらだろうな。億は超えてると思う。まぁ殆ど滞納による罰金なんだけど』
珂波汰「滞納って…払ってなかったって事か？彫金ってものによっちゃ儲かるんだろ？それにアンタは表の仕事以外にも、裏の仕事だって……」



裏の仲介人の仕事のギャラは表と比べて比じゃない位多い。正直、３年も我慢すれば１億なんていう金額はあっという間に返せたとも思う。だけど、そうしなかった理由……。
これ、壱や彰優たちに喋ったら泣きわめいて怒られたな…。


『…肩代わりしたんだよ』
珂波汰「か、肩代わり？」
『３人分の借金を肩代わりしてたら……自分の分がおろそかになって、利息で増加した』
那由汰「借金の肩代わりって……なんで！？」
『その内２人はコード付きでね。支払い終わる前に逝ったから代わりに払ったんだ』
珂波汰「っ、なんでそいつ等なんかの為に支払ったんだよ！そのせいで姉ちゃん罰金ついたんだろ！？」
『コード付きが何らかの原因で支払い不可能になったら……その遺族に義務が課せられる』



これがあるから私のように負債を抱えてるコード付きは逃げられない。逃げたら自分以外の身内にこの義務がすいつく。ドクズじゃないなら、猶更だ。
全くとんでもない制度を作ってくれたもんだよ。


『そいつらは私にとって大事な奴等だったし……そいつ等の遺族って奴も、とてもじゃないが払える奴等じゃなかったから』


気付けば自分の分は滞納が続いて、利息が膨れ上がった。それで億を超えた辺りから自分でも数えていない。もう自分でも支払う事は絶対無理だと分かっている。


『あと1人はちょっと理由が違うけど、それであっという間に負債もち』
珂波汰「っ…なんで、そんな軽くいえんだよ！笑い事じゃねぇだろ！」
『受け入れてんだよ。何もかも』



リュウが言っていた。
籠の鍵は開いているのに、どうして前に出ないのか。これはその理由の1つだ。
私は一生これに囚われ続ける。あくまで1つだけど。



信じられないとワナワナと拳を震わせる珂波汰に向き直り、その頭をもう一度撫でた。



『珂波汰はスラム出身だからとか泥ネズミだからっていって自分を蔑ろにする必要はないんだ』
珂波汰「………」
『どこへだって行けるんだから』

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