羅刹の幻影は囁く part11

【FAMILY】20 ページ36

呆然とする珂波汰の背に、『予想外だったか？』と声をかける。


珂波汰「！…姉ちゃん」
『あれが、彼らの覚悟なんだろう』
珂波汰「…姉ちゃんは、知ってるのか。その、ファントメタルが危険なもんかって」
『そりゃあ、専門の彫金師しているし……そっちの方でも仕事をしたことがある。だから、大人の目線を見ると使ってほしくはないけど……何かを信じて、それの為に戦おうとする若者から取り上げたりはしないさ』

その権利もないしねと告げると、珂波汰は「そっか」と俯く。
すると、「あっ」と声を出す珂波汰。


『どした？』
珂波汰「……アイツ等に、ありがとうって…言いそびれた」


しくじった、という顔を浮かべる珂波汰に思わず目を見開いてしまう。同時に隣の那由汰もふふっと声を押し殺して笑い出した。


珂波汰「な、何だよ」
『いや、意外と言うか』
珂波汰「はぁ？何が！」
那由汰「……友達、出来たんだな」


嬉しそうに笑う那由汰に「は？」と惚けた声で返す珂波汰。


那由汰「 “ありがとう”って言える奴が、俺や姉ちゃんの他にも出来たって事」
珂波汰「そ、それは…」
那由汰「珂波汰。珂波汰は、変わっていける。今よりもっとずっと強くなれる」
珂波汰「だからそれは…「俺がついてる」


離れかけていた2人の手がまた繋がれる。
強く強く離さないように那由汰は握り、「2人でいれば最強だろ？」と珂波汰に笑いながら言った。
目をキョトンとさせ、少し照れくさそうな顔を浮かべた珂波汰もニッと笑い、


珂波汰「ああ。二人でいれば、最強だ」


と、那由汰に返した。


2人の様子を眺め、思わずフッと吐息がこぼれる。
一先ず、今回はこれで大丈夫かな。

珂波汰の頭をポンッと撫で、『そんじゃあ私も帰るね』と告げた。


『今度は喧嘩するなよ』

再度告げて、背を向けようとした時、珂波汰から呼び止められた。


珂波汰「…姉ちゃん」
『ん？』
珂波汰「あの時、何て言おうとしたんだよ」
『あの時？』
珂波汰「…俺が自由にとか、そういうやつの続き」
『……ああ、あれか』


那由汰が見つかって言いそびれてたんだっけ。別に言わなくてもいい事なんだけど、気になるのか私をジッと見つめる珂波汰。

【FAMILY】21→←【FAMILY】19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す