羅刹の幻影は囁く part11

【FAMILY】15 ページ31

ASIDE


那由汰が無事見つかった事で、ひと段落した。
時間も時間だって事があり、飯を食って帰ろうという事で、雷麺亭へ辿り着いていた。

ガラッと扉を開くと、「らっしゃい」と晴兄の声が飛んでくる。混んでいる時は殆ど席が埋まっているが、今回はまだ誰も客が入っていない。


玲央「あ、お客さんいないね。ラッキー」
『けど流石に大所帯だから、カウンターじゃなくてテーブルにするか』
北斎「うん、そうだね。もう少ししたら混んでくる時間だし」


カウンターの奥にあるテーブルに一目散に駆ける玲央と紗月。その時、いつも私が座っているカウンターの様子がおかしい事に気が付いた。


『あれ？』

テーブルの上には何も置けないように食器類が置かれていて、椅子もシーツがかけられている。いつもこんなの置いてないのに。



『なんでこれ、ここに置いてあるの？』


晴兄の方に尋ねるが、暫く視線を合わせた後にそっぽ向かれる。え、何その態度。
困惑していると玲央が「知らないの？」と言ってきた。


『知らないって、何が？』
紗月「そこ、いつもそういう風になってんだよ」
『は？』
北斎「誰も座らないようにって、いつもそうしてる」
玲央「前に座ろうとしてた酔っ払い客をマスターが腕捻り上げて、座るなって脅してたんだよねー」
紗月「あぁ！めっちゃくちゃ早かったよな！あんときのマスター、凄ぇ！」



意気揚々と語る紗月達にただ困惑して、もう一度晴兄を見た。
けどそっぽ向かれたままで視線をあわせようとしない。

ふと、珂波汰が思い出したように「そう言えば」と呟き私を見てきた。


珂波汰「前に姉ちゃん、そこに座ってたよな」
「「「え？！」」」
『す、座ってたも何も、いつも空いてるから』
玲央「嘘―！？僕らも何回か着てるけど、空いてる所見た事無い！」
珂波汰「俺も姉ちゃんが座ってる時以外、ほぼ見てねぇ」


ラッキーガールだね！という玲央。だが、ただたんにラッキーという訳じゃない。

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