羅刹の幻影は囁く part11

【FAMILY】3 ページ19

少し目を見開いた晴臣は、真顔を緩め、先ほどよりやや乱暴にAの頭を撫でた。
内心、照れ隠しかと思いつつも、晴臣の好きなようにさせるA。


晴臣「そういえば、どうするんだ」
『何が？』
晴臣「cozmezも含めて、俺とお前が義兄妹だって話すのか？」
『………うーん、やめとこう。長くなるし……話すと面倒な人いるし』
晴臣「それもそうだな」


2人の雑談をしていた時、突然Aのスマホが音を鳴らす。
誰からだと呟きながら画面を見ると珂波汰の名前が表示されていた。


『…もしもし？かな〈姉ちゃん！！那由汰が、那由汰がいなくなったんだ！！〉っ！え？那由汰が？』



余りの大きさに一瞬、耳を抑えたが、珂波汰の切羽詰まった声と内容を聞き目の色を変える。



珂波汰〈朝起きたら、どこにもいなくて…書き置きも何もねぇから…〉
『散歩とかじゃないのか？』
珂波汰〈何もいわずになんて、今までで一度もなかったんだ。それに、この間のメタル奪おうとしてきた奴等も含めて、俺らに喧嘩売って負けた奴等にでも見つかったら……っ〉


息を呑む音がスマホ越しに聞こえ、『そうか』と静かに呟く。



『…わかった。じゃあ私も探しに出るよ』
珂波汰〈あ、あぁ…頼む〉
『うん、それじゃあ切るよ』



一旦電話を切り、『急用ができた』と晴臣に言い、手に持っていた箒を片付ける。



晴臣「気を付けてな」
『うん、ありがとう。掃除最後まで手伝えなくてごめんね』
晴臣「構わねぇよ。大事な弟の為だろ」
『…うん。行ってくる』


晴臣に見送られ、慌ただしく店を後にした。

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