羅刹の幻影は囁く part11

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珂波汰「……なぁ」


あれから暫く私の胸で大泣きしていた２人だが、次第に落ち着いてきた。
それを見計らい、止めていた珂波汰の治療を再開している。

ふと、包帯を巻き終え、ガーゼを頬に張った段階で珂波汰が私に声をかけた。


『ん？』
珂波汰「……………い、いか」
『え？いか？』



イカ食べたいのか？と聞いたら、顔を真っ赤にして「違う！」と怒鳴られた。
助けを求めて那由汰を見たら知らぬ顔をされる。何なんだ一体。




珂波汰「だ、だから……っ、その……ま、また…………………姉ちゃんって、よんでいいか」



怒鳴った時より顔を真っ赤に紅潮させ、語尾が小さくなりながら告げる珂波汰。非常に照れながら言われたその言葉に暫く固まってしまった。
その反応にやや傷ついたような、寂しそうな顔をした珂波汰はそっぽ向いて「もういい」と言い放ってしまった。やれやれと那由汰が肩をすくめるのが横目で見える。



呼んでいいかって、そんな…私に許可をとる事もない。
そんな立場、今の私にはないんだから。



『……逆に、呼んでくれるのか』



そう尋ねると、そっぽ向いた珂波汰がピクリと痙攣し、ガシガシと頭を掻く。手首にも腕にも今まで私が巻いた包帯が痛々しく見える。

すると吹けば飛ぶかもしれないようなか細い声で、

珂波汰「アンタが、嫌じゃないなら」と告げた。


その様子を傍観していた那由汰がはぁ、と溜息を吐いて私に視線を移した。


那由汰「姉ちゃん、弟いるんだろ」


自分はアッサリ姉ちゃん呼びになっているのは、まぁ置いておいて那由汰の質問に私は頷く。

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