羅刹の幻影は囁く part10

【264】　 ページ7

＿＿NO SIDE



ワッと活気だつCLUB Paradox。
それを遠目から見る詩音は、どこか懸想したような面持をしつつもそこから背を向ける。

ふと、彼のスマホのバイブブレーションが鳴り、すぐさま着信に出る。




詩音「詩音です。はい、3rd battleは滞りなく終わりました」



平然とする中、ネクタイを整えたり、耳に触ったり、どこか落ち着かない様子で電話の主と話し続ける。




詩音「…………問題ありません。はい……全ては、貴方が想定した盤面で進められてます」




「感銘致します」と相手に敬意を送るように言葉を出す詩音。
ふと、電話越しに相手の笑い声が詩音の脳裏を支配する。

ゴクリと固唾をのみながら、心許ない様子で相手の言動を待つ。



詩音「わかりました。お任せください」


相手との通話が終わり、はぁああと重く、疲れ切った息を漏らす。
そして近くにある電柱に背を預け、星空が見えない暗い夜空を見る。


かろうじて薄月が見えるが、その光も分厚い雲に遮られすぐに見えなくなる。





詩音「いらないものは、見捨てるべき。それが正しい事なんだ。そうに決まっている」




だから、僕は間違ってない。


その呟きは冷たいからっ風に遮られ、夜半の空へ消えた。

【265】＿＿北斎SIDE→←【Result announcement】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す