羅刹の幻影は囁く part10

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先ほどまでの和やかな雰囲気に、突如肌を切り裂くような寒風と、針の雨を降らせるような言葉だ。あの青年には話さなかった暗闇を孕んだ事情が、無遠慮に斬りこまれる。


ああ、これだ。この感覚。
彼らが押し入ってくるまで、ずっと耐え続けてきた、慣れ続けてきた感覚。



……………なるほど、道理で態度が冷たい訳だ。
阻まれた事と、この態度の理由を理解し、商品に伸ばした手をダラリと降ろす。



この人も、そういう人だ。





店員「うちの店に犯罪者が出入りしてて、商品を飼っているなんて噂が立ったら…困るんです。それに、アン・フォークナーさんはうちのお得意様なんです。あなたみたいな下賤な方と知り合いだなんて、あの方にとっても悪い噂が立つので今後一切かかわらないで頂きたいんですが」



店長にしては若い女性だ。アンのことを知っているってことは、BAEのファンの可能性が高い。これの場合はほぼ私情の嫉妬な気がするが…まぁいいか。


何を言い返しても、「犯罪者」とか「コード」とか返すんだろうな、こういう人は。



アン「罵倒する奴等だって一部いるけど、あんなの世界に比べればほんの１部に過ぎないんだよ」






そうかもしれない、そうかもしれないよ。
だけどアン、違うんだ。


お前達みたいに、普通に私を受け入れてくれるヤツの方が、その一部なんだ。



それ言葉を交わる余力もなく、会釈だけして店を出た。
背後からは「二度とこないでください」と声をかけられる。言葉と共に侮蔑の視線を感じる。





もう慣れた。
慣れたんだ。だってこんなのいつからだと思ってる？
ずっと、ずーっと前からだ。

こうされるしか私にはないんだ。




でも、どうしてかな…。


慣れ親しんだはずなのに、何故だろう。













『…………ちょっと、胸が痛い』

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