羅刹の幻影は囁く part10

【PRIDE EPILOGUE】6 ページ2

夏準の言動を未だに理解できず、ずーっと固まっていたが詩音の姿が見えなくなったころに漸く我に返れた。そして夏準の腕の中から逃げ出す。


『お前、何言ってんだよ、人の弟に』

夏準「弟なんですね。身内だと思っていましたが、あまり似てないものですね」

『放っておけ。てか、人の質問答えろや、このマッシュルーム野郎』

夏準「照れ隠しですか？可愛いですね」

『その小奇麗な顔に傷つけるぞ』


晴れやかな笑みを浮かべる夏準の胸ぐらをつかみ上げる。その笑顔通じると思ってんじゃねーよ、この野郎。
私の怒りなど露知らず、「僕は思ったことを言ったまでです」と言い、胸ぐらをつかむ私の手に、夏準の手が添えられる。



夏準「今しがた彼にも言ったばかりですが、僕は本気ですよ。逆に僕以上に優良な人物はいないでしょう」
『自画自賛してんじゃねーよ』
夏準「いつぞや言っていた狐顔の方よりはマシなのでは？」
『この場にいない人を侮蔑するなし…。あー、もう帰る』
夏準「おや、返事は返してくれないんですね」


「悲しいです、しくしく」とさもわざとらしそうな泣き真似をする夏準を無視し、そのまま背を向ける。もう付き合ってられん。コイツ、どこまで本気なのか…さっぱりと分からないし。
ある意味、こういう所は依織さんと似てるかも。

興味惹かれるようなこと、一切した覚えないんだが………彫金以外。



『私は他人に自分を預ける気はねーよ』




一昨日こいバーカと吐き捨て、出入り口の方へ歩き出した。

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