羅刹の幻影は囁く part9

【PRIDE】15＿＿夏準 SIDE ページ10

＿＿「いらない子になっちゃうよ？」



棗リュウにそう言われた瞬間、僕を無残に捨てた両親の言葉が脳にこだました。
僕は恐れている。


漸く、僕を僕として見つめてくれている、一緒にいてくれる彼らも両親のように離れていくんじゃないのか。


怖くて、怖くて、いつしか笑顔の仮面をつけ続けた。



良い顔をしておけば皆、好意的によってくる。

優秀でいれば皆、僕を頼ってくる。

決して離れたりなんてしない。

だからもっと頑張らないと、笑顔でいないと。





そうじゃないといけなかった…………だけど、




＿＿アレン「夏準！」
＿＿アン「夏準！」





夏準「……………ふっ、僕らしくありませんね」



波の緒と共に、八重の潮風が髪を揺らす。


煩くて、馬鹿で、抜けてて、天然で、それでいて真っすぐで、僕の手をとろうとする。
そんな彼らと一緒にいるからだろうか。



スゥと、肌に心地よく染みる海風に目を細めていた時、





？？「海だぁー！！！」





……そんな素っ頓狂な叫びで、僕の晴れやかな心は邪魔された。




どこのボンクラなのかと、叫びの方角を見ると……わかめのように長髪を揺らした、背格好からして男だろうか。

その男が、大海原を目の前に両腕を上げ、海風を心地よく、これでもかという程浴びていた。
………大の大人がする行動とは思えない。

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