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【252】__善SIDE ページ33

情けもなく涙がこぼれる。


“あの日”以来、彼女が人前で泣いているところを見たことがない。彼女はあれ以来、泣いているのだろうか。でも、それは絶対に私には見せてはくれない。
小さな体で何かを背負い込んで、ずっと一人で歩く彼女を支える事なんてできない。




…先輩、すいません。私には無理です。


貴方が大事に慕っていた人を、貴方がついていこうと思ったいた人を、支える事が出来ない、守る事も、何一つ…私が出来る事なんて、泣けない彼女のかわりに、涙を流すという情けない事だ。


拳の中で爪が食い込む。けど痛みを感じられない。
こんな痛みより、彼女が抱える痛みの方が……。




『ありがとうございます』


その言葉を聞いて、思考が開けた。




善「……どうして、お礼を言うんですか」



私があなたに何をしたんですか。何もできなかったじゃないですか。
若のようにあなたに一歩踏み込むことも、私には愚かしくできない。そんな私に、どうしてお礼を言うんだ。



『私の為に、泣いてくれているから。だからありがとうございます』




あの人とは気質の異なる優しい笑みを浮かべるAさんは包帯の巻かれる指で、そっと私の頬の涙をぬぐう。離れていくその指に対し、何に縋るわけでもないのに、両手で握る。




善「お願いです…っ、どうか……ご自分を大切にしてください。お願いします」



小さな手だ。私が本気を出せば折れてしまいそうな程の手。
この手で、貴方は何を抱えているんですか。どうしてそれを、1人で抱えているんですか。



聞きたい事が山ほど浮かぶが、どうしてもそれを口には出せない。
壊れ物を扱うかのようにその手をギュッと握り締める。





でも……私の言葉に彼女は、




『……ごめんなさい、善さん』






『わかりました』とは、絶対に返してくれなかった。

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テルミヤコウジ(プロフ) - 鈴零_さん» 自分でもここまで長く続くとは思っていませんでた(;^ω^) これからもちょびちょび頑張ってやっていきますので、よろしくお願いします! (2021年12月2日 23時) (レス) id: 3b90083b4f (このIDを非表示/違反報告)
鈴零_(プロフ) - 纏めた方がいいと思ったので、こちらで書かせていただきます。続編(part9)おめでとうございます。次もゆっくり見させていただきますね(*^^*) (2021年12月2日 20時) (レス) id: eefe8e15b5 (このIDを非表示/違反報告)
鈴零_(プロフ) - テルミヤコウジさん» 返信ありがとうございます、気づきませんでした(-_-;)全然大丈夫です、むしろ楽しみが増えるので( ´∀`*)全部見ました! (2021年12月2日 20時) (レス) id: eefe8e15b5 (このIDを非表示/違反報告)
テルミヤコウジ(プロフ) - らむねさん» わー!毎度毎度コメント下さり、本当にありがとうございます!!cozmezなんか毎回短くてすいません(泣)今後の彼らに期待してみててください!よろしくお願いいたします!! (2021年11月19日 23時) (レス) id: 3b90083b4f (このIDを非表示/違反報告)
らむね - あーもうcozmez尊い!かわいい!毎回更新楽しみにしています!応援してます! (2021年11月19日 20時) (レス) @page40 id: 663a3c4de7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:テルミヤコウジ | 作成日時:2021年11月11日 2時

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