羅刹の幻影は囁く part8

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『素直じゃないなぁ、あの人』
リュウ「マスターは照れ屋さんだからねぇぇ〜」
『……ん？』
リュウ「んー？」


呟きに返事が来たと思ったら、先ほど走り去ったリュウが私の隣に立っていた。気配なさすぎて叫びそうになるのを喉奥で抑え込む。


『おっ…まえ、さ、さっき走って…』
リュウ「ねぇねぇゲッティー、ゲッティー！リュウ君のお話、聞いてよ〜〜聞いてくれないと、コチョコチョネバネバボワボワの刑だぞ〜」
『コチョコチョは分かるが、その他は……て、その手つきやめろ！話聞くから！』



人の話は聞かないくせに、自分の話を遮られるのは嫌なのか、自己ちゅうかよ。
妙な手つきをするリュウから数歩下がりつつ、彼の言う話を聞く事にする。事務所目の前にあるのにいつ帰れるんだろうか。



『あんまり長くしないでよ、疲れてるんだから』

リュウ「なんで疲れてるの？」

『そりゃ彫金したから…て、いなかったんだよな。ファントメタルの彫金はメタルの幻影を使う、だからその後の疲労感が』

リュウ「でもさ、ゲッティーはトラップ反応が遅れるんでしょ？」

『それはそうだ…………ちょっと待て』




なんで知ってる？

あの場にいたならまだしも、コイツは出かけていた筈だ。
BAEやcozmez…依織さんも話すとは思えない。



『どうして知ってるの、私のトラップ反応が遅効性なの』
リュウ「えー？どうしてかなぁ」
『はぐらかすな。奇怪な行動をとるとか思考が飛びぬけてるとか、そういうんじゃない。
お前は一体………』



何なんだ、と開きかけた口にリュウの人差し指が当たり、言葉を止められる。
さっきまでチェシャ猫のようにニヤニヤしていたリュウの表情から、突然感情が抜け落ちたようにヒュッと真顔に代わる。

その劇的な変化に思わず目を見開いていると、あと1歩、リュウが歩み寄り距離感が0になる。




リュウ「鍵は開いてる筈だよ」
『…え？』



耳元でリュウの声が木霊する。低く、無機質で感情がない声。
背筋がゾッとしてしまうような、そんな声だ。

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