羅刹の幻影は囁く part5

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……元カノの部屋とか使っているとしたら、大分申し訳ないんだが。


勝手にみてあれだが心がブルーになっていた時、ノック音が響く。
慌てて引き出し奥に写真立てを直した。

「失礼するよ」という声と共に西門さんが部屋に入ってくる。



西門「体調はどうだい？」

『一通り歩けているから問題はないと思います。痛みもないですし』

西門「そうか、それならよかった」

『傷はまだ完治とは言えないけど、一人で戻れるくらいには回復しました。３日間、お世話になりました』

西門「いや、よかったよ、無事に回復して。もう出るつもりかい？」

『これ以上、迷惑かけるわけにはいかないので』

西門「まぁ、元気になったなら構わないけども…。
体がもう大丈夫そうなら、帰る前にシャワーを浴びていったらどうだい？」



その言葉にピタリと動きを止める。
確かにこの３日間、傷の完治の為に風呂には入っていなかった。


『……すいません、お借りします』
西門「いやいや、流石に女性をそのまま帰すの忍びないからね」



案内するよ、と部屋を出る西門さんの後についていった。





＊＊




『…はー、生き返った』



簡易的なシャワーが設置されている場所に案内され、そこでシャワーを浴びた。
怪我があるとは言え、3日風呂無しはキツイ。

湯舟じゃない事が申し訳ないと謝られたけど、ここまで世話をしてもらって湯舟に堂々とつかる勇気は私にはなかったから助かった。

実里がキッチリと水防止用のテープを傷口に張ってくれたおかげが、傷の方も問題なさそうだ。こういう事に気配りが回るんだよな、アイツ。




『…あれ？』



服をまた借りたわけだけど、おかれていた服を見て目を丸くした。
今までは神林匋平や西門さんのものを借りていたけど、これは一回り小さい…というか殆ど私と同じサイズだろう、淡い水色のシャツが置かれていた。


四季や棗リュウのものかと思ったが…花柄の刺繡が縫われているから、どうみても女性のものだ。

…………この服、どこかで見たこと……あ。


あの写真の女性が着ていたものだ。
元カノのものを着ても問題ないのか、というかなんであるんだろう。




ちょっと気まずくなり、どうしようかと悩んでいたら、「風邪ひいちゃうよ」と鈴の様に綺麗な声が聞こえてきた。

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