羅刹の幻影は囁く part5

【188】 ページ29

晴臣〈ぃ…おい〉
『え、あ、はい』
晴臣〈聞いてなかっただろ〉
『い、いやそんな事は〈聞いてないな〉………聞いてませんでした』



はぁあと深いため息が電話越しに聞こえてきた、多分すごいしかめっ面しているんだろうな。



晴臣〈今しかめ面してるとか思っただろ〉



もうヤダこの人。怖すぎる、与信術？エスパー？マジで盗聴器ついてる？
色々と怖すぎて涙目になってきた。




晴臣〈まぁ、これ以上深くは聞かねぇよ。電話ではな〉
『……で、電話では？』
晴臣〈まともに歩けるようになったらすぐに来い〉
『えーっと〈返事〉…………ハイ』



デジャヴだ。前にもあったぞ、この流れ。
そんでまた溜息が聴こえてきた、これも前の流れと同じだ。




晴臣〈……本当にもう大丈夫なんだな〉


先ほどの低い声じゃなく、いつもの感じで聞いてきた。
変わりように驚きつつ、その言葉を聞いてどうしようもない感情が込み上げてくる。



『うん、もう大丈夫だよ』
晴臣〈ならいい。また電話する、暫くはゆっくり休めよ〉
『うん、ありがとう。連絡できなくて、ごめんなさい』
晴臣〈……お前が無事ならそれでいい〉



〈また連絡する〉と言い、電話は切れた。
黒くなった画面を見つつ、バタリとベッドに倒れこむ。


本当に心配ばっかりかけてるよな、ダメな義妹。いつ見放されてもおかしくないのに。
そう思っていると、プルルとちゃくしん音が来た。


また晴兄か？と思ってそのまま電話に出た。



『はい、もしも〈生きてんな！！？〉っ！？』




晴兄とは違う声にビクリと体を起き上がり、画面を見ると「依織さん」と書かれていた。




『い、依織さん？』
依織〈おい、生きてんのか。傷は酷ぇのか？今どこだ〉




口をポカーンと開けたままになってしまう。
口調が……昔に戻る位焦っているからだ。



『お、落ち着いてよ、依織さん。今まで連絡できなかったのは、ごめん。私は無事だよ』
依織〈口ではそういえんだよ！今どこだ！？事務所じゃねぇだろ〉
『ア、 アンタの所の元相棒の店だよ！』



善が今、察の奴等から情報と…とブツブツと聞こえてきたからあわてて叫ぶ。

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