羅刹の幻影は囁く part4

【Phantasma】 ページ25

カチカチと事務所の時計の針の音が響くと同時に、カンッ、キシャッと金属音の音が響いていく。


作業をするAも、それを見る2人も全く飽きる様子がなく何時間も見続けていた。




カタンッと工具を置き、自身のメタルに2回目のキスを落とす。
すると、白くやわらかな膜のような光から、燐光のような青白い光に変化する。



刹那、Aのメタルの共鳴をするように2人のメタルが仄かな光を発した。
その光がグルグルと円を描くように形を作っていく。



フワフワとぼんやりとした形だったソレは、徐々に細長い形へ変化し、2つに割れるように動き出す。


珂波汰「！」




2つに形割れたそれは、青白く光る蛇に姿を変えた。

淡く光る蛇2匹は作業を行うAの気を引こうと、長い尾でAの頬を撫でたり、チロチロと舌を覗かせるがAはそれを見向きもせず、珂波汰のメタルに集中していた。




珂波汰「っ……」



しかし、珂波汰はその蛇に誘われるように今まで抑えていた腕を上げ、蛇の方に手を伸ばす。



が、伸ばす直前で隣にいる那由汰がそれを止めた。
驚く兄を声に出さずジッと目で訴え、行動を止めさせる那由汰。


その弟の姿を見てハッと目に光を戻した珂波汰は、そっとその腕を降ろした。



珂波汰(っぶねぇ…これが幻影に魅入られるってもんなのか……………つーか、なんか眠ぃ)




幻惑に耐えたのか、元々疲労がたまっていたからか、徐々に重くなる瞼と意識に眉を寄せる珂波汰。そんな珂波汰の背をトントンッと音を立てず優しくなでるのは隣にいる那由汰だった。


その温かさに誘われるように弟の肩に寄り掛かる珂波汰はぼんやりとした目で、作業をするAを目に移す。




珂波汰(っ…眠ぃ…………チクショ、まだ……もう、ちょっと……見てぇのに)




眠りたい気持ちと、まだ見ていたい欲望がせめぎ合いつつも、迫りくる眠気に逆らえず、暗い微睡に落ちていった。






そんな珂波汰の事を、淡く光る幻影の蛇が、優しい眼差しで見つめていた。

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