羅刹の幻影は囁く part4

【Phantasma】 ページ24

『始めるからな』




今から何もするなと再度念押しし、フゥと息を吐き、自身のメタルにキスを落とす。
最初に珂波汰のメタルを固定させ、鑢を取り出すと、鱗模様の表面に沿うように当てる。


フゥという一息をいれたあと、鑢をメタルの表面に滑らせた。


刹那、稲光のような刃の様に鋭い放電が天井部分を切り裂く。

その光の鋭さに思わず声を上げそうになった2人だが、互いの手を握りそれに耐える。



次の瞬間には、金波銀波のように優しく淡い光が部屋中に広がる。





珂波汰(すっ…げぇ………これ、アイツの幻影か？)
那由汰(さっきまでライトだけの明かりだったのに…今、凄ぇ明るい)




Aの手元を照らすスタンドライトの明かりのみだった暗闇から打って変わり、部屋中に広がる優しい光の波。それに魅入っていた珂波汰はふと、Aに視線を移した。




珂波汰(汗、嘘だろ？今一瞬なのに…)




始めて3分も経っていない段階であるにもかかわらず、彼女の額にはびっしりと汗が浮かんでおり、その事実に驚愕した珂波汰。


その汗をぬぐう事もせず、ただジッと珂波汰のメタルにのみに意識を集中させ、手を動かし続ける。




珂波汰(……普段の感じと、全然違ぇ)
那由汰(………………凄ぇ、綺麗だな)





部屋に広がる淡い光よりも、メタルにのみを見つめるAの事をジッと見つめる双子だった。

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