羅刹の幻影は囁く part4

【Phantasma】 ページ11

『始めるよ』




黙り込んだ3人の姿を一度目におさめ、自身のメタルにキスを落とした。
同時に、細いヤスリを取り、アレンのメタルに添える。



スゥーハァーという息遣いの後、細い指に力が込められ、工具がメタルにあたった。




瞬間、ブワリとオーロラのような輝きがAのメタルから発せられ、周囲を覆う。
スタンドライトしかない暗闇だった筈のリビングが一気に明るくなった。





アレン「っ……(すっ、げぇ…これ…幻影か？)」
アン(あぶなっ……思わず叫ぶところだった)
夏準(幻影の質は使用者とメタルの親和性によりますが…この幻影を見るに、親和性がかなり高い……その分、トラップ反応が心配ですけど)




ポタッ、とリビングのフローリングにAの額から汗がこぼれ落ちる。
1分も経っていないのに汗を流すAに声に出さず驚く3人。




アン(嘘でしょ？まだ30秒も経ってないのに…あの汗の量って)
夏準(これを夜まで……飲み食いなしで体がもつのが不思議ですね)
アレン(幻影を維持しながら、体力まで消費して……でも、それでも……凄ぇ、綺麗だ)






水を真上からかぶったような汗を流しつつ、目の前の作業に集中していくA。

まるで目の前にしか世界がないように、他の物など一切目が入らないように、目の前のメタルを磨く作業に集中している。






その姿を見ていた3人は、同タイミングで「美しい」という感情に支配された。

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