羅刹の幻影は囁く part2 (ページ9)

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【55】＿＿珂波汰SIDE ページ9

『あ』
珂波汰「んだよ！」
『雨上がったな』
珂波汰「あ？」

屋根から顔を出して頭上を見上げると、さっきまでの豪雨が急に止んで、日差しが雲の間から覗いてる。通り雨みてぇなもんだったのか。

『そんじゃ、傘代は今度の給料からひいとくね』

珂波汰「はぁ！？それとこれと関係ねぇだろ！！」

『アハハッ、冗談だよ。本気にするなって、可愛いなぁ、お前』

珂波汰「かわ…っ！？」

『じゃあ、仕事もよろしくね』

ポンポンッと最後に頭を撫でられ、壊れた傘を回収して去っていった。

珂波汰「………んだよ、ブス」

結局、なんだったのかよくわかんねぇ。
なんか凄ぇモヤモヤする。

珂波汰「……………雨、もうちょっと長かったら……………あ？」

自分から漏れた言葉が信じられなくて、思わず口元を手で覆う。

何考えてんだ、俺。
雨止めとか思ってただろ。

まるで、俺が…アイツと長く一緒に…………

そこまで考えて、顔が熱くなるのを感じた。

珂波汰「だぁああ！！馬鹿か、俺は！！」

ガシガシとアイツに撫でられた頭を掻きむしり、じんわりと残ったぬくもりを叩く。
帽子を乱暴にかぶり、那由汰が待つ家に走った。

もうあいつと仕事以外で会わねぇ、てか会いたくねぇ！！