羅刹の幻影は囁く part2 (ページ30)

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事務所からバイクへ目的の場所まで約15分。
到着した建物をジッと見つめる。

名前聞いたときから嫌な予感していたけど………ここ、スタジオだ。

読者モデルとか撮影するスタジオなのだが……モデルと聞いて、出てくる顔が１つ。そして、もう１つ面倒な存在が浮かび、頭を抱える。

『……………名刺渡すんじゃなかった』

着信拒否したくなるほど、BAEの朱雀野アレンから連絡が止まらない。半分以上、依頼じゃなくてHIP HOP関係だし。

最近じゃ、出た瞬間アイツの声だったら即ガチャ切りだった。そんな中、モデル撮影があるスタジオを出入りする……いやまさか、とは思うが。

今日の仕事はスタッフの１人が病欠でこれなくなったから、その手伝いとして呼び出された。正直、１人いなくてもいい気はするのだが…受けてしまった以上後味悪い。

運を天に任せるか。

渋々と自分を納得させ、建物へ入った。

中へ入りスタジオの方へたどり着くと、配属スタッフがバタバタと動き回っている。キョロキョロと視線を回すが、危惧していた奴はいそうにない。

ホッとしていると、現場監督らしき男が駆け寄ってきた。

男「いやぁ、すいません。急に体調不良者が出ちゃって‥」
『いえ、何からすれば？』

中央方面にセットされた撮影場所で、指示された通りの作業を行う。作業といっても、荷物を運んだり、コードを繋いだり等、一般基礎的なものなので素人の私が混ざっても支障はなさそうだ。

そうした作業を続けて２０分くらいして、撮影モデルとやらが続々とスタジオに入っていく。中には偉そうな態度をとるモデルもいた。

『(多少顔が綺麗なだけで、どうしてあそこまで威張れるのやら)』

なんてことを口にした瞬間、あの鋭い視線にハチの巣にされる。心の中で舌を出しつつ、他のスタッフと共に作業を続けていく。

その時、廊下の方で人一倍やかましい女たちの悲鳴…いや歓声が聴こえてきた。何事と思ったら、周りの女性スタッフやモデルたちもソワソワしている。

……………自慢ではないが私の予感は当たる。(ほぼ嫌な方でだが)

男「燕夏準さん、はいりますー」

予感的中。
その名を聞いて、『げっ』と言わなかったのをほめてほしい。持ってきていた帽子を深くかぶり、なるべく目線を下に下げる。