【74】＿＿依織SIDE ページ28
依織「…怒らせてもうたか」
ちょーっとカマかけてみたけど、やっぱり情報は出さんか。
ま、痛い所突かれたのはあるやろうけど。
グラスの淵をなぞりつつ、先ほどまで隣にいた女の顔を浮かべる。
今でも不愛想やけど、昔はもーっと不愛想やったなぁ。
あれでまぁ信頼されてるっちゅー事か…分からんけど。
しかしまぁ…
依織「アレから、3年……か」
よくもまぁ立ち上がったもんやな。
俺がいうのもなんやけど、あの状態やったらいつ死んでもおかしくなかったんやけど…。
何があそこまであの子を突き立てるんか……復讐か、贖罪か。
そんなんに縛られる子でもないか。
マスター「…無垢な存在を、あまり暴かないのも身のためだぞ」
ふと、今まで黙り込んでたマスターがそう口を開く。
話の流れ分からんでも、アカンってのは察したんか…流石、親父の知り合いやな。
依織「あれが無垢に見えるん？」
マスター「少なくとも、親父殿や若頭さんよりは、な」
依織「ハハハッ、そらたしかに」
骨の髄まで濁りきった俺らとは違って、どっか芯に汚れてないもんがある。
その強さがあるからこそ、あの子は今の地位に実力で辿り着いたと言える。
敵は多くおる反面、ついていく奴も多い。
悲しい話、これがあの子の天職かもしれへんなぁ。
依織「ただ真っ白なお花畑ちゃんには、なーんも興味ないねん。
表面が汚れとるようにみえて、内側だけはキラキラッにひかっとる。そしてそれを誰にも染めさせようとせぇへん。そうやから、あの子を気に入ってるねんで」
マスター「…それはまた、趣味が悪い」
親父が生存中にも言われた言葉を改めて言われて、ハハッと笑い捨てる。
趣味なぁ、確かに悪いんかもしれんけど。
依織「それに男やったら……染め上げたくなるって、思うやろ？」
自分の色に、な。
そこまで言わず、マスターに笑いかけると「若いなぁ」と呟かれた。
若さ故の過ちやったら……俺もあの子も、気ィが楽やけどなぁ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 122人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：テルミヤコウジ | 作成日時：2021年6月29日 19時
