羅刹の幻影は囁く part14

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夏準が面倒な宣言をした時から会えていない。
声だけ聴いたのも、珂波汰が怒鳴り散らしていた時くらいだ。

たった3つ差の姉弟。本当だったら一緒にいれたかもしれない
もしかしたら私もお前も学校に行って、普通の人生を歩めていたかもしれない。


けど、そんな「普通」は私達には訪れなかった。
親のせいじゃない、とは断言できない。



『……この間、トラップ反応に襲われた時に、記憶が欠けかけたんだ』



私がそう言うと、始めて詩音が反応を示す。
息を押し殺すように〈っ〉と吐息を吐いていた。



『アイツ等との記憶が、私からこぼれ落ちるようにパキッて音がしてね。そのまま手の中をすり抜けるように、徐々に薄れていくはずだった。だけど、その時に母さんが私をつなぎとめてくれたんだ』




あのトラップ反応で、最後に聞いた声は……もう今はいない母の声。
大好きだった、ずっと一緒にいたかった。

ずっと一緒に、詩音と3人で………普通に暮らしたかった。




『悪い夢をみているだけだって、本当に優しい人だったよ。お前は……あんまり覚えてないかもだけど。私達の母親は本当に強くて、綺麗で、優しい人だった』
詩音〈………………………貴方は母さん似でしたよね〉



ようやく声を発した詩音は〈写真で見ました〉と続ける。

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