羅刹の幻影は囁く (ページ42)

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『テメェ、道具使うのずるいぞ！！』
アレン「え、ずるいとか何言ってんだ」
『何私がおかしいみたいになってんだよ！しつこい！ウザイ！キモイ！』
アレン「悪口のオンパレード！？」

そんなに嫌うか！？と叫ぶアレンを無視しようと歩き出したが、行き先をふさぐようにアレンが立っている。

苛々した様子で前髪をクシャリとかき上げる。

『なんなんだよ、お前。鬱陶しいぞ』
アレン「なぁ、連絡先くれ」
『はぁ？言っておくけど、メタルは調整しないぞ。他の奴を紹介しただろうから、そいつらから……』
アレン「違う！メタルじゃない！俺はオマエと音楽について語りたいんだよ！」

アレンの言葉の言葉に呆けた声を出し、呆れる。
何言ってんだコイツという冷めた目をアレンに向けるが、狼狽える様子はなく、ジッと深みのある赤色の瞳でAを見つめた。

『音楽って……(こいつ、HIP HOP馬鹿だ)』

うわぁと軽く引きつつ、深い溜息を吐く。
そして渋々といった感じで、財布の中から紙を1枚取り出し、アレンに向けた。

アレン「なに、これ？」
『私の事務所の名刺』
アレン「事務所？」

差し出された名刺を受け取り「萬屋【虚空】？」と首を傾げる。
アレンが困惑する間に、横をすり抜け、距離を取るA。

『それで依頼して金払うなら、お前の好きな話でもなんでも何十時間付き合ってやるよ。ただし、時間がある時にな』

付け足しのような感じでそう言うと、『もうついてくるな』と叫び、門の方へ駆け出した。

呆然と残されたアレンは、去っていく背中をジッと見つめ、名刺に視線を落とした。

アレン「……月夢A」