羅刹の幻影は囁く (ページ34)

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【32】＿＿アレンSIDE ページ34

何とか伝えたくて、アイツが残していったトラックメモを1枚2人の前に突き出した。

アレン「ほら、これ！アイツが書いたトラックのメモ！ヤバイだろ！」

俺の言葉に半信半疑という風に、2人はメモを見る。
暫く見ているうちに、2人の顔が呆れから驚愕に変わった。

アン「…本当だ、凄いね。このテンポとダウン」
夏準「旋律からしてコンシャス・ヒップホップがメインみたいですね。歌詞も中々…」
アン「だね！これ音付けたら凄そう！」
アレン「だろう！？」

2人に分かって貰えて、またテンションが上がってくる。
メモをジッと見ていた夏準だけど、ふと「で、おバカなアレンはこれを勝手に見たんですか？」と言う。

アン「え？これ勝手に見たの？見せてもらったとかじゃなくて？」

アレン「そりゃあ、そこにあったら読むだろ！」

アン「読まんわ！！デリカシー皆無か！」

夏準「まぁ、今に始まった事じゃないですよ。それよりも…そのメモの裏」

アン「裏？………あ？」

アレン「……あれ、こいつ……………誰？」

メモかと思っていた紙は写真だったみたいだ。
トラックと旋律が細かく書き込まれる裏には、全然知らない野郎の顔があった。

「同じ学部の子だよ」とアンが言うけど、こんな奴いたっけ？

夏準「いつも僕らに構ってくる凡人ですよ」

アン「ジェームズ…なんとかという奴。BAEだからってちょーしのんな！って、どの口が言うんだか」

アレン「へー……いやこんな奴よりも！」

アン「いやそんなことって……そういえばアレン、課題終わったの？」

アンにそう聞かれ、一瞬意識がボーッとしたけど………すぐに思い出した。
そういえば、まだやってない！！！

夏準「今回で何度目ですか」

アン「マージでやばいよ。今回」

アレン「課題を忘れたとしても俺はあいつとHIP HOPについて語りたい！！」

アン「キリッとした顔で馬鹿な事言うんじゃない！！」

夏準「言っても無駄でしょう。3限目が自習になることを祈るんですね。じゃあ僕は先に食堂へ行きますから」

そう言うと、振り返りもせずに食堂の方へ歩き出す夏準。

アン「あ、ちょっと！この馬鹿と2人っきりにしないでよ！僕も行く！！」
アレン「ば、馬鹿って……ちょ、まてよ！！」

2人に置いて行かれそうになったので、慌てて走り出した。