羅刹の幻影は囁く (ページ32)

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【30】ページ32

ASIDE

リストに入っていた最期の曲が終えた。
ペンを置き、体を伸ばす。随分と長い時間書いていた気がする。

久々にこんな自由な時間が……あ？

『は？』

目の前にいた赤毛の男。
いつ座ったのか記憶にすらない。その男…BAEの朱雀野アレンは、何かの紙をジッと見ていた。何で前に座ってんだ、何見てんだと思ってようやくハッとした。

『勝手にみるな！』

シンとした図書館に響くほど、大声をあげてしまう。
だが、そんなこと気にしてられず、奴の手から私が書いたトラックメモを奪い取る。

よく見ると1枚だけじゃない。今まで私が書き起こして破いた物をいつの間に……。
コイツ！常識無っ!！？人様が書いた奴を勝手に見るか、普通！

奪われたことで私の事を凝視した朱雀野だったが、パッと表情が笑みに代わる。

え、怖っ。

アレン「お前、凄ぇな！！！」
『うるさっ』

私も大概煩かったが、コイツの声の方が以上だ。恐らくまだ授業中なのだろう、静かに勉学に勤しむ生徒や読書する生徒、教員がコチラをギロリと睨んできた。

彼らに詫びを入れる暇もなく、向かいに座っていた筈の朱雀野は私の方へ詰め寄ってきた。

アレン「お前凄ぇよ！！1枚1枚、ジャンルが全然違ぇのにそれでいて簡潔してる！音を入れる前からこんなに想像できるトラックを見たのは初めてだ！自分で音入れるのか！？だったら今手持ちに…！！」
『うるさい！！』
アレン「いだっ！？」

バシッと赤毛をはたき、その口を閉ざさせる。
受付を見ると警備らしき男がこちらに向かっていた。

まずいと思った時、チャイムが図書館内に響いた。

・・・・・・まて、これ何のチャイムだ？

『おい』
アレン「な…にぃ！？」
『今何時、今何終わりのチャイム？』
アレン「え？………えーっと、さっき1限が終わって、2限始まったから……昼休みのチャイム、かな？…て、俺課題やってない！」
『昼休み！？』

もうそんなに時間が…集中しすぎた。
引き寄せていた朱雀野を突き飛ばし、荷物をまとめ、鞄に突っ込む。
寝ている様子のリックをつまみ上げ、急いで外に出た。

アレン「あ、ちょ…待てって！！」

なぜか朱雀野まで追いかけてきたが、待ってやる理由も余裕もない。
「君たち！」と止める警備員をすり抜け、一応最低限謝罪をし、図書館を飛び出た。

目標に会えなかったら、マジで来た意味がない！！！

そのままの勢いで、食堂の方へ走った。