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「 Aさん、俺のこと嫌い? 」
「 えっ、と、なんで…? 」
「 Aさんが俺のこと嫌いなら、ちょっと加減考えようかなって 」
アタックを辞める、という選択肢はないらしい。
きゅるきゅるなお目目でこんなこと聞かれたら、たぶん目黒くんのこと嫌いな人でも 嫌いじゃないよ って答えちゃうと思う。
とはいっても、自分が少しずつ彼に惹かれていること、自覚はある。
「 嫌い、ではない、です、」
「 そっか、よかった 」
ほっとしたように笑う目黒くんに、胸がチクリと痛む。
「 じゃあさ、なんでそんなに突き放すの? 」
「 それ、は… 」
「 …ごめん、踏み込みすぎた 」
こんどは、しゅん、と子犬みたいな顔をする目黒くん。
次から次へと色んな顔をするから、もっと見てみたい、なんて思ってる自分がいる。
.
「 …引かない? 」
「 引かないよ。おれどんなAさんでも大好きな自信あるから 」
くだらないって思われるかもしれないけど、目黒くんになら話しても大丈夫かなって、根拠もないけどそう思って。
「 わたし、恋愛経験めちゃくちゃ浅いの。もう30手前なのに 」
「 初心でかわいーじゃん 」
「 …年下にリードされるのも、なんかちょっと気が引けて 」
「 歳とか関係なくない?おれはどっちであれリードしたい派だよ 」
わたしの言葉全てを肯定してくれて、それだけで、なんだか自分の悩みがすごく馬鹿馬鹿しく思えてきた。
「 目黒くんはさ、なんで、わたしなの? 」
「 んー…、俺に対しても、もう1人の派遣の人に対してもめちゃくちゃ人見知りなんだなっていうのは伝わったけど、お客さんと接する時はちゃんと目を見るとこ、かな。1番のきっかけは。」
「 へ、」
よく見てるっしょ、って、得意げに笑った目黒くん。
あ、また新しい表情見つけた、なんてちょっと楽しくなってるわたし。
それにしても、すごい、目黒くん。
極度の人見知りだけど、そんな私情、お客さんに向けちゃだめだって思って、怖いけど、なんとか目を見るようにしてたの気づくなんて。
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今まで告白してくれた男性たちは、見た目とか、守りたくなるとかそんな理由ばっかりだったけど、こんなにちゃんとわたしのことを見てくれてるのは初めてで。
「 友達からで、いいですか…? 」
目黒くん相手になら、素直になれる気がした。
fin.
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作者名:紫紺 | 作成日時:2022年3月19日 0時