子供じゃない｜ラウール ページ1
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「 Aさん、卒業おめでとうございます 」
「 ふふ、ラウールくん、ありがとうございます 」
「 …向こうでも頑張ってね 」
「 ありがとう。ラウも、あと1年頑張ってね 」
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わたしは、今日で高校を卒業する。
ずっと夢だったお仕事に就くことができたけど、配属先は地元からだいぶ離れてしまって。
1年ほど前から付き合ってる1つ年下のラウとは、遠距離になってしまう。
「 無理しすぎないでね！頑張りすぎちゃだめだからね！ 」
「 ラウも受験生なんだから、体調管理しっかりね 」
付き合ったばかりの頃と比べたら、寂しがり屋でも甘えん坊でもなくなったけど、それはきっと、就活期間にわたしが我慢させすぎてしまったからで。
「 寂しい 」も、「 会いたい 」も、口に出して言わなくなった。
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「 遠距離になっちゃうけど、ラウは寂しくない？ 」
「 …寂しくないよ。Aさんが頑張ってるって思ったら、離れてても俺も頑張れる！ 」
なんて、そんな泣きそうな顔で言われても、説得力ないのに。
きっと口にしないのは、わたしを困らせないように って思ってくれてるってわかってる。
でも、わたしなんかのために我慢して欲しくないし、自分の思ってることはちゃんと言える人になって欲しい。
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「 ねえ、ラウ。就活期間、たくさん支えてくれてありがとう 」
「 んふ、急に？ 」
普段は、恥ずかしくて言えない気持ちを言葉にして、ラウの目をしっかり捉えて紡いでいく。
就活期間、あまり会えないのを受け入れてくれて、支えてくれて、ありがとう と、ごめんね を精一杯伝える。
「 でもね、もう我慢しなくていいんだよ 」
「 してないよ、」
「 もー、大人ぶんなくていいんだって！
わたしはね、寂しがり屋で甘えん坊なラウも大好きなんだよ 」
ラウはきっと、年上のわたしに追いつこうとして背伸びをしてる。
それも可愛くて愛おしいけど、そんな事しなくても、って、安心させてあげたい。
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わたしの言葉を聞いても、黙ったままで、途端に恥ずかしさか込み上げてくる。
何か言ってよ、と口を開こうとしたけど、気づいたら大好きな匂いに包まれていた。
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作者名：紫紺 | 作成日時：2022年3月19日 0時
