それは ページ32
生気の消えた夜更けの館。白砂の庭に広がる血だまりの上、痛いほどの静寂のなかにポツンとたたずんでいた、あの日。
こんなにも、こんなにもはっきり覚えているのに
『ありえないわ』
エ「なぜ？」
『あの女は私がこの手で喉を引き裂いたの。生きているはずがないし、その後に私が行った里はあの家とはなにも絶対に関係ないはず』
思わず早口でまくし立てる。私から母を奪ったあの女を、母を見捨てた父を殺したという事実を否定されるようで苦しかった。それは今の私の後ろに広がる過去をすべて否定されているのと同じだ。
エ「−−この世に、絶対なんて存在しませんよ」
静かにエーミールは口を開いた。街頭に照らされた夜道の上にたたずむ彼はどこか不気味な感じさえする。
『･･････どういうこと』
エ「あなたもご存じのはずだ。芦屋家は呪術の大家。あなたが経験したものがすべて幻に見せる術が使われていなかったとなぜ断言できるのです？ 復讐という欲望に、その怒りに突き動かされていたあなたが冷静にあの状況を判断して幻ではないと言い切ることがなぜできるのですか？」
彼の言うことはもっともだ。今思えば確かに復讐に突き動かされていたのかもしれない。
エ「さらに言わせていただくと、あの里は芦屋家の邪法で人ならざるものとなった貴方が、どのような行動をとるのか観察されるための実験場だった」
『そんな･･････』
彼の言っていることは嘘だ。しかしその言葉は私の中の「確信」を揺るがすにはあまりにも大きなパワーを持っていた。
『じゃあ、私は何のために･･････』
エ「意味なんてなかったんですよ」
エーミールの言葉が私に刺さる。
これまでのことも無意味。
私の決意も覚悟も結局、仇によってもてあそばれて利用されていた。
私の中で何かが音を立てて崩れ去った。
『フフフ･･････ アハハハハ！』
私が突然おなかを抱えて笑い出したのを、エーミールを含め目の前にいる彼らはどこか憐れむようなものを見る目で見ていた。
『そうね無意味だったかもしれないわね』
私は体を預けていた消火栓から離れ、再びストリートの真ん中に歩み出て行った。中央から彼の方に向き直り、手の中のクナイを握りなおした。さっき使った術はもうすでに解けていて、体中の傷跡ををなぞっていた模様も消えている。
『もう、どうでもよくなっちゃった』
そう言って私は持っていたクナイを、自分のみぞおちに突き立てた。
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熊野影(プロフ) - のりたまさん» ご指摘ありがとうございます！早急に直させていただきます！ (2019年9月12日 23時) (
レス) id: 0bac161a03 (このIDを非表示/違反報告)
のりたま(プロフ) - 宵の宴 のページの最初の綺麗なスターリンの部分。元の名前がリンちゃんなので名前変換させるとスター(名前)になってますよ！ (2019年9月12日 22時) (レス) id: dfae553a09 (このIDを非表示/違反報告)
月輪雫(プロフ) - ベル子さん» ありますよねー！これからも頑張って有能ショッピ君とか他のメンバーも書けるように精進して行こうと思います┏○ﾍﾟｺ (2018年9月3日 2時) (レス) id: 0bac161a03 (このIDを非表示/違反報告)
ベル子(プロフ) - 月輪雫さん» はい！全然！！やはり、しょっぴくんは有能ってイメージありすよね。 (2018年9月3日 2時) (レス) id: c193797e68 (このIDを非表示/違反報告)
月輪雫(プロフ) - ベル子さん» コメントありがとうございます！ショッピ君はすごく有能な後輩ってイメージだったんで……有能さが書けてればいいなと思って書きました！大丈夫だったでしょうか……？ (2018年9月3日 1時) (レス) id: 38ce602a15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：熊野影 | 作者ホームページ：http://nーー
作成日時：2018年6月15日 1時
