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．
雅紀は、どうして華じゃなくて早坂さんを選ばなかったんだ、って言った。
早坂さんが泣いてた、って言った。
…どうして…
まさか。
そういえば、前も同じようなことがあった。
…俺、
…自惚れても、いいのかな…？
夢中で、階段を走って登っていたら。
「…あ、遅いよ、翔ちゃん」
…え
「先生…」
大野先生が、階段を降りてくるところだった。
「お姫様が教室でお待ちですよー」
「え…」
「体操着で愛の告白ってのもいいよね？」
「青春だなあ〜〜」って、他人事みたいな先生。
いや、まあ他人事なんだけど。ていうか。
「なんで…先生」
「…ふふ、がんばってね、王子様」
ひらひら、って手を振って、そのまま階段を降りていった。
なんだったんだ…
…とにかく、早く行かなきゃ。
*
「…そろそろ、帰ろうかな」
大野先生も帰ったし、空も暗くなってきた。
大野先生の言葉が、頭の中をぐるぐる回ってる。
『本当に好きな人は、振られたらどうしよ、って怖くなっちゃうからね』
まるで、櫻井くんの好きな人は華じゃない、みたいな言い方。
…そんなわけないのに。
薄暗くなってきた空が、悲しい気持ちをより一層大きくして。
…帰ろう。
席を立って、教室の入口に向かって1歩踏み出した、そのとき。
ガラッ！！
…え、
勢いよく扉が開いた、その先に立っていたのは
「…櫻井、くん」
*
息を切らしながら教室のドアを開けると、そこには早坂さんが立っていた。
「どうして…」
呆然としている、早坂さん。
月の光に照らされて、瞳が潤んで見える。
「…早坂、さん」
…心臓が、バクバク鳴ってる。
死にそうなくらい、緊張するけど、でも。
「…いつも…泣かせてごめん」
…でも。
「…ずっと」
…言わなきゃ。
「ずっと前から、好きでした」
*
…え…
今、なんて…
「…俺は、雅紀みたいに素直じゃないし…明るくも、ないけど」
「早坂さんが、もし良ければ」
少し俯いていた櫻井くんが、ぱ、と顔を上げて
「俺と、付き合ってください」
…うそ、
その言葉を、声を。聞いた途端。
驚きなのか、嬉しさなのか、分からないけど
涙が、溢れた。
.
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作者名：＃林檎 | 作成日時：2017年8月8日 20時
