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先生は、私の席の前の椅子に腰掛けて。
「借り物競争のお題が好きな人ってさ、考えたやつら、案外頭の中古いよね？」
「俺の学生時代もあったもん(笑)」って笑う、大野先生。
「…先生も、好きな人と走ったんですか？」
「まさか！そんな恥ずかしいことできないよー」
「え…？」
「ああいう時はね、無難な人を連れてくの。仲がいい女友達とか」
「女友達…」
「本当に好きな人は、振られたらどうしよ、って怖くなっちゃうからね」
「まあ、よっぽど自信があるやつは一緒に走って、って言えるかもしれないけど(笑)」って。
「翔ちゃんは俺と似てるから。きっと、前者だよ」
…また。やっぱり、バレてるんだ。
「…先生、前も櫻井くんがなんとかって仰ってましたよね？」
「そうだっけ？」
「もう、とぼけないでください！」
「まあ、いつか分かるよー多分ね」
「もういい？元気そうだから帰るねー」って、先生は教室から出ていった。
*
体育祭の後。
テントや用具の撤収作業をしていたら。
「翔ちゃん、ちょっと来て」
雅紀に、呼び出された。
「…なんだよ」
「いいから！」
．
連れてこられたのは、体育館の裏。
「…なんだよ、俺忙しいんだけ、」
「翔ちゃんのぶわぁぁぁぁか！！！」
雅紀が、俺に向かって叫んだ。
「え…」
「なんでチカちゃんなの！どうしてAのとこに行かなかったの！」
「どうして、って…」
「俺の、ずっと側で笑っていて欲しい人って書いてたんだよ！A、ずっと泣いてたけどね！」
「え…なんで…」
「知らない！気になるなら行ってみれば！」
教室だよ！って雅紀の声を背中に感じたと思ったら
いつのまにか俺は、走り出してた。
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作者名：＃林檎 | 作成日時：2017年8月8日 20時
