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．
花火大会は、楽しかった。
今年最後の花火は、すごく綺麗で。
それを、大好きな人たちと、一緒に見れて。
でも、何かが、違う。
雅紀と櫻井くんの元気が、ない。
「花火、きれいだったねー！」
笑顔で言う華に、返事をしない、2人。
「ちょっと2人とも、どうしたの！ケンカー？やめてよね！楽しい気分が台無し！」
華が言って
「はは、ちげぇよ」
「うん、ケンカ、してないよ(笑)」
2人は笑って言ったけど。
なんだか、違和感。
「…雅紀、櫻井くんとなにかあったの？」
小声で聞くと
「え…ううん、なにも」
…どうしたんだろう。
*
夏休みは、終わったと思ったら。
新学期が始まってすぐ、体育祭の準備が始まった。
「みんな、なんの競技に出るのー？」
食堂に集まって、いつもの4人で昼飯。
「俺は借り物競争」
「あ、オレも借り物競争出るよ！」
「え、2人、一緒なんだ！」
「そうそう！オレはあと、リレーも！」
「雅紀、足速いもんね(笑)」
「そうなんだ！翔、がんばってね！」
…恋も順調で、おまけに足も速いとか。何だよそれ。
「翔ちゃん、本番たのしみだね！」
…俺の心は重かったけど。
「…うん」
笑って、言えてたかな。
．
体育祭当日。
眩しいほどの青空の下で、俺は1人、思い心を背負って。
どうせ体育祭なんて、足の速い雅紀みたいなやつがヒーローになるんだ。
プログラムは順調に進んで、とうとう借り物競争。
「翔ちゃん、負けないからねー！」
「…おお」
太陽みたいな笑顔で笑う雅紀が眩しくて、思わず目を背けた。
そして
「よーい」
『パーン！！！』
お題の書いてある紙に向かって、走って向かう。
やっと辿り着いて、書いてある文字を読むと。
…嘘だろ
思いついた人は、ただ1人。だけど。
その人は、いま俺が名前を呼んだら、いけない人。
意を決した俺が向かった先は
「…華！」
．
とうとう、借り物競争。
雅紀と櫻井くんが、2人並んでスタートラインに立ってる。
2人が何か言葉を交わしたと思ったら、
『パーン！！！』
ピストルが鳴って、皆が一斉に走り出した。
雅紀と櫻井くんが、2人トップで紙を拾う。
櫻井くんは、書いてある文字を読むと、うちのクラスの応援席に向かって走ってきた。
「…華！」
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作者名：＃林檎 | 作成日時：2017年8月8日 20時
