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桜なんか、大嫌いだった。
「おい、翔！あそこにお前がいるぞ！」
「あ、ホントだ。っておい！俺、櫻井だわ！」
ってのがウケたせいで、
小学生の頃は100万回このやり取りをさせられたし。
「好きな花は？」
「向日葵です」
みたいな会話も、
きっとこの人いま、「桜じゃないんかい！」
って突っ込んでるんだろうな、とか。
桜です、って答えたら答えたで
ああ、やっぱり。
って思われるのも嫌だし。
まあ、一番の理由は、
初恋の相手に、桜の下で、振られたこと。なんだけど。
そんなことが積み重なって、
気づけば俺は、桜をなるべく避けて生きるようになっていた。
そんな俺に、変化が起こったのは
２年前の、ちょうど今頃。
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ああ、やだやだ。
どうして俺は、桜並木を通らなければ通えない高校なんかを選んでしまったんだろう。
体験入学で来た時は、夏だったから
この木が桜だなんて気が付かなかった。俺のバカ。
ここで自己紹介とかになったら最悪。
どうせまた弄られるんだろうな。
ずっと下向いて歩いておけば
誰も声かけてこないよね？
なんて思いながら、俯いて歩いていたら。
「A、おはよ！」
「わ！おはよ、雅紀」
「なになに、写真撮ってんのー？」
朝からうるせぇな、カップル。
イチャイチャするなら家に帰れば？
なんて。
今思えば、俺、かなりやさぐれてた。
「だって、桜、凄く綺麗だから」
え、
「今まで見た桜で、1番綺麗…」
ドクン、と心臓が、鳴った。
彼女は桜を綺麗だと言ったのに、
なぜか俺が、褒められたような気持ちになって。
なんだか胸が、くすぐったい感じがして。
「ほんとA、花、好きだよねー？」
「花、っていうか、桜が好きなの！」
「はいはい(笑)ほら、行くよ！」
「わ、ちょっと待って！」
A、さん…
何年生だろう、年上かな。
横にいた人、彼氏かな
彼氏だよね、きっと。名前で呼びあってたし。
手繋いで、走って行ったし…。
入学して早々、俺の青春は
失恋から、始まった。
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作者名：＃林檎 | 作成日時：2017年8月8日 20時
